【無人島レポート-2023春-】船②

【無人島レポート-2023春-】船②

 広島を出て高速道路を2時間半。ようやく岡山の船着き場に到着すると「夢来丸」は陸に上がった状態で進水を待っていた。花まる丸より大きな船体。強いエンジン。閉め切れるキャビンに、標準装備のGPS。計器類はデジタルで表示される。花まる丸がゲームボーイだとすると、夢来丸にはDSのような発展と新鮮さがある。かっこいい。早速、船の前でカトパンと記念撮影をしていたら、撮りすぎて事務のお姉さんにちょっと笑われてしまった。

 船首には小さいながらもくす玉が吊ってあり、船体はパーティーで使われるようなキラキラした帯状のモールで飾られている。進水式の準備だ。カトパンがお祝いのシャンパンの栓を抜き、船首と船尾に振りかけて、くす玉を割る。「祝 進水」と書かれた小さな垂れ幕が現れた。ささやかな進水式を終えると、お店の方がクレーンを操作して夢来丸を吊り上げる。まるでカバみたいに、巨大な動物が体にベルトを巻かれておとなしくどこかへ連れて行かれるようだった。

 クレーンで海上まで移動した夢来丸が、そのままゆっくりと海に降ろされていく。ベルトがたわんで船が海上で自立すると、ちょっと居心地の悪そうだった姿がしっかりと船になった気がした。船体がスラっとしていて美しい。やはり船は水の上にあるべきものなのだ。

 カトパンが船の説明を受けている間に、車に積んできた20ℓのガソリンタンクを4つ船に運び込む。私は車で帰るが、カトパンはこれから夢来丸に乗って安芸津まで帰る。夢来丸の大きなエンジンでも海路だと4時間ほどかかるので、途中でガス欠にならないよう燃料をしこたま積んでおく必要があるのだ。もちろん、カトパンの燃料(昼食)も購入済み。海にはガソリンスタンドもコンビニもないので、すべてを事前に準備しておく。

 船の最終チェックが終わると、いよいよ出航の時間になった。先に、先導役の船が出る。初めての場所なのでお店の方が沖まで案内してくれるのだ。カトパンがキーをひねると夢来丸のエンジンが静かに唸り、船が目を覚ました。グッドモーニング、グッドセーリング。っていう言葉がどこかの国にありそうだよねと思いながら架空の格言を添えて船出を見送る。船が後進してゆっくりと桟橋から離れ、カトパンが手を振る。船首が沖へ向くと後進が止まり、一瞬あたりが静かになった。直後、エンジンが轟音を立ててスピードが上がる。夢来丸はきれいな線対称の波を立てて遠ざかっていった。私は進水の様子を高濱さんのラインに送り、備前をあとにする。

 4時間半後、カトパンは無事に安芸津に到着し、夢来丸の納船は無事に完了した。夢見る子どもたちを乗せてまっすぐに来島へと海を走る、夢来丸の姿を見るのはもうすぐだった。

花まる学習会 橋本一馬

 

待望の2番艇、夢来丸の進水式。
写真を撮り過ぎてお店の人が笑っていた。

  

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