【無人島レポート-2022夏-】開拓団②

【無人島レポート-2022夏-】開拓団②

 説明しよう。ダンチクの駆除は、大きく2パートに分けられる。①地上部分の刈り取り、②地下部分の掘り出し、である。単純なようだが、1株を駆除するのに大人4人がかりでも2~3時間はかかる。ちょっと長めの映画だってみられる長さだ。指輪物語は無理だが、東京物語はいける。刑事物語は余裕だ。

 地上部分の刈り取りには、刈り払い機を使う。たまに「ブイーン」とけたたましい音を立てながら、道路脇の雑草を機械で刈り取っているおじさんたちを見たことがないだろうか。あれだ。しかし、機械の力をもってしても作業は思うように進まない。なぜか。大量の割り箸を集めて、両端を輪ゴムで束ねたものを想像してほしい。そういう状態の箸は、切っても倒れなくなる。倒れずに残った箸はそれ以上刃が進むのを邪魔する。そうなると、同じところばかりが切れて、いつまでたっても切り進むことができない。これと同じことが密生したダンチクでも起こる。ではどうするかというと、切れた竹を引っ張り出しながら、地道に少しずつ減らしていく。すべての竹を切り終えると、ようやく地下部分にアタックする準備が整う。ここまででおよそ1.5時間。ちょうど武田鉄矢のハンガーヌンチャクが見られるあたりだ。

 地下部分の掘り出しは、ひたすら穴掘りになる。切り株状態になったダンチクのまわりをスコップで掘り下げていき、地下部分を露出させていく。たまに「キンキンに冷えてやがる」ビールのことを考えながら、地下労働施設で穴を掘っているおじさんたちを見たことがないだろうか。あれだ。ひたすらスコップを地面に突き立てて、腰の深さまで掘り下げると、ようやく巨大な地下茎が空中に浮いたラピュタのような姿を現す。ここまででおよそ2時間弱。そろそろ笠智衆の「今日も暑うなるぞ」が聞けるあたりだ。

 最後は、ノコギリを使って巨大な株を土ごとラザニアのように切り分ける。そして小分けにした茎の塊を引きちぎり、だんだん株を小さくしていく。最後の1つを抜き終えると、あとにはクレーターのような大きな穴が残る。この穴の名は勝利だ。ひとしきり健闘を称えあったあと、穴を埋め戻して整地すればテントが張れる「ただの地面」になる。これで作業は終わりだ。

 「ただの地面」を作るためにどれだけの労力と時間を費やしたのかは、開拓をともにした仲間にしかわからないことだ。その下に埋まっているのは、土ではない。いつまでも続くように思われたスコップの音であり、冗談交じりに交わした会話の節々であり、木陰で飲む水のたまらなさであり、作業が進むたびに上げた歓声であり、泥だらけのツナギや汗まみれのTシャツのカッコよさだ。つまりはそれが開拓というもの。たまに無人島でタオルを首に巻いた、何やら楽しそうな大人たちを見たことがないだろうか? あれだ。

花まる学習会 橋本一馬

 

開拓団のみなさんと。穴の大きさが奮闘を物語る。

【無人島レポート-2022夏-】開拓団① を読む

【無人島レポート-2022春-】現地集合 をはじめから読む

【無人島レポート-2022春-】特製マグカップ を読む

【無人島レポート-2022春-】新拠点 をはじめから読む

【無人島レポート-2022春-】引っ越し をはじめから読む

【無人島レポート-2021初夏-】醤油メシ をはじめから読む

【無人島レポート-2021初夏-】ドラム缶風呂 をはじめから読む

【“職人”の無人島レポート】をはじめから読む

 

花まる子ども冒険島
モノであふれた社会とはかけ離れた島、無人島。
今日を生き抜くために、頼りになるのは自分の心。
そこは、野外体験の究極の場となる。
強い『心』と自分の『目』を磨き、『自分の言葉』で語れる人に。
心と身体を強くする、花まる子ども冒険島が、いま始まる。
https://hanamarumujinto.wixsite.com/home

\最新情報を更新中!/
花まる子ども冒険島Instagram
https://www.instagram.com/hanamaru_mujinto/

花まる学習会 野外体験サイト
https://hanamaruyagai.jp/

無人島開拓記カテゴリの最新記事