【無人島レポート-2022春-】新拠点①

【無人島レポート-2022春-】新拠点①

 朝。目が覚めると「あれ?どこ?」と思ったが自分の家だった。まだ封の切られていないダンボールがあちらこちらにある。春秋の箱から服を取り出して着替えると、PCと手帳と財布だけ持って家を出た。駐車場にとめてあるのは社用のハイエースである。引っ越し後の片付けが落ち着くまで使わせてもらえることになった。とはいえ、これからここで生活していくには車がいる。何に乗るかなあ、と考えながらキーを回し事務局へ向かう。

 いままで広島には「事務局」というものがなかった。本来、花まるの教室長は毎朝事務局に出勤し、会議や事務仕事、授業準備を昼過ぎまで行ってから各教室に出かけていく。しかし、社員がカトパン一人しかいないとなると話は別で、どこかに出勤するよりも自宅ですべての仕事を完結できたほうがかえって都合がよかったのである。だから、広島には事務局がなく、代わりにカトパンの家が自宅兼、事務局兼、倉庫になっていた。先月までは。

 事務局に着くと、すでにカトパンのジムニーが到着していた。隣にハイエースをとめると、ナンバーが「・870(ハナマル)」「6210(ムジントウ)」と並ぶ。自分もナンバーを考えておかなくては。玄関へ向かうと、カトパンが外に出てきて歓迎してくれた。客人としてではなく、同僚として。今日から、新しいチームでの無人島開拓が始まるのだ。

 事務局は船を出す港から車で10分ほどの場所にあり、見た目はふつうの家である。ちょうどいい空き家が売りに出されていたのをカトパンが見つけた。敷地には2階建ての母屋、納屋、そして大きな木造の古い倉庫がある。合わせて何と300坪。小学校の体育館くらいはある。一般的な民家の敷地としてはかなり広い。聞くところによると、昔は漁具の製造販売をしていたようで、自宅兼、事務所兼、工場のような使い方をしていたらしい。つまりカトパンスタイル。自営業ともいうな。

 スタッフが3人なのに、カトパンがこの広い家を選んだのには理由がある。将来的に子どもたちの宿泊施設として利用することを考えたからだ。子どもに限らず、これから島を訪れる人たちが増えていくなら、本土にも滞在できる「基地」のような場所があったほうが絶対にいい。「ジョルノ・ジョバァーナには夢がある」ということだ。違うか。何にせよ、我々の目指す用途としてはぴったりの物件なのである。

 念のためにつけ加えておくと、スタッフが3人、というのは間違いではない。私のほかに、もう一人社員が広島に移住してくるのである。私に刺さったのは白羽の矢だったが、彼女に刺さったのはもっとこう、広瀬香美的な矢だ。狙ったのが誰かなんて。

 

新拠点の外観。どこかに職人が隠れている。

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花まる子ども冒険島
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そこは、野外体験の究極の場となる。
強い『心』と自分の『目』を磨き、『自分の言葉』で語れる人に。
心と身体を強くする、花まる子ども冒険島が、いま始まる。
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