【無人島レポート-2022冬-】小屋づくり①

【無人島レポート-2022冬-】小屋づくり①

 冬。島で倉庫として使っていたテントに限界がきた。というより超えた。テントのその先へ行った。普通のキャンプ用テントを1年近く無人島に張りっぱなしにした結果である。初めの頃は防水テープで補修していた裂け目も、いまでは修復不可能なほどにあちこちビリビリに裂けまくって巨大な穴となり、それをテントの上から防水シートをかぶせてなんとか延命していたものの、荒天のたびに生まれる新たな裂け目を目ざとく見つけて入り込んでくる容赦ない風の仕打ちによって防水シートが内側から吹き飛ばされた結果、もはやそこは屋内でありながら屋外であるという色即是空空即是色、テントを超越し禅問答の域に達しようとしていた。

 そんなわけで、次のミッションは倉庫の建設である。とはいえ、我々もテントが悟りを開きかけるまで何もしていなかったわけではない。そもそも備品倉庫の建設は2022年度が始まった当初から年間計画に組み込まれていた優先度の高い仕事のうちのひとつであり、夏までの完成を狙って図面を引き、必要な資材も6月にはすべて買い揃えて島に運び込んでいた。しかし、次第にサマースクールの準備に追われはじめてそのまま本番になだれ込み、気づけば森山直太朗が歌い出し、夏は終わっていたのである。

 しかし、これからは違う。槇原敬之にバトンが渡り冬が始まると、次第に海が荒れて寒さも厳しさを増す。島で遊ぶコースは一旦お休みになる。このオフシーズンを利用しない手はない。ただ、いくら倉庫づくりに注力できるといっても、さすがにカトパンと私だけでは人手が足りない。それに、島の開拓は誰かと共有してこそ価値がある。そこで、再び開拓団の助けを借りることにした。冬の親子開拓団である。この冬のあいだに、可及的速やかに、かつ一気呵成に倉庫を建てるのだ。

 倉庫の大きさは、保管すべき備品の量と建築資材の定型寸法を参考にして決めた。資材をなるべく切ったりつないだりせず、売っている状態のままで使ったほうが作業の効率がいいからである。結果、縦3m×横3m×高さ4mの小屋になることが決まった。それを、湿気対策として50㎝の高床式にする。窓はなし。屋根をすべて透明の板でつくることで採光する。ちなみに屋根の形は片流れ。また、無人島の美観を損なわないよう、外壁に杉の板材を張ることにした。

 小屋をつくるうえで作業の効率や見た目の美しさも重要だが、最も重要なのは安全性である。簡単にゆがんだり倒れたりするものはつくれない。そこで、小屋の骨組みに鉄パイプを使うことにした。銀色の人工物は島のなかでかなり異質な印象を与えるが、それも木の壁で覆ってしまえばいい。これで効率と強度と美しさに折り合いがつけられる。そして11月、待望の開拓団を迎え小屋づくりが始まった。

花まる学習会 橋本一馬

 

備品を保管していたテント。
ついに限界を超えた。

 

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