【無人島レポート-2022夏-】社員開拓団②

【無人島レポート-2022夏-】社員開拓団②

 空港で合流したライガーをハイエースに乗せて、一路拠点へ向かう。あるものを載せるためだ。道中、みんなで久しぶりの再会を喜び合う。広島に来てからというもの、日常的に会話をする相手が減った。だから闇夜をさまよい生者を求めるゾンビのように、人に飢えているのだ。シャー。

 私とカトパンは、社内でもライガーとのかかわりが深いほうだと思う。私はライガーの「サバイバルキャンプ」にスタッフとして参加してお世話になったし、カトパンに至っては、サマースクール「ライガーと行く! 開拓ボクらの北海道」に参加して現地の人たちや大自然に心打たれ、その後すぐに北海道に移住してしまったほどだ。文字通り人生が変わっている。そんなライガーと今回行う開拓のメインは、水の輸送である。

 『天使にラブ・ソングを』が再放送しているくらい何度も言うが、無人島には水がない。水道はもちろん、川もない。生きるために必須である真水が得られないのだ。ゆくゆくは井戸の掘削を考えてもいるが、当面は本土から水を持ち込むしかない。そのために島に設置したタンクの容量は500ℓ。1年目、カトパンはそれを1人で満タンにした。イメージは、灯油の赤いポリタンク。あれを28個運ぶとだいたい500ℓになる。拠点の水道で汲んだ水を車に積み込んで港へ運び、船に積み替えて島へ渡り、砂浜に足をめり込ませながら島に運び上げて、タンクに一つずつ手で入れる。一度に運べる量ではないので、それを初めから数セット繰り返す。それがあまりにも過酷だったと遠い目をしたカトパンから聞くに及び、今年からは文明の利器、エンジンポンプを試してみようということになったのだった。

 拠点に着くと、3人で巨大な500ℓタンク2つをハイエースに積み込む。それだけで荷台はいっぱいになった。ちなみに、家でお風呂に入るときに溜めるお湯の量の目安が250ℓだといわれている。つまりお風呂4回分の容量、バスタブ4つ分の圧迫祭りだ。タンクの上部にある大きな口に、庭の水道から伸ばしてきたホースを差し込んで注水を始める。一晩で田んぼの水を飲み干してしまうと恐れられている何らかの妖怪のように、タンクは水を溜め続けた。

 注水を終えて港へ向かう。明らかに車が重い。うなりを上げて走るハイエースは、どこか牛を思わせた。港に着くと、空のほうのタンクを船に積み替えて2つのタンクをホースでつなぐ。その間に小型ポンプを接続して首尾は上々。船にライガー、車に私、ポンプにカトパンがつくと、リコイルロープを引いてエンジンを始動する。出でよ文明、そして願いを叶えたまえ! ……あれ? …水出てないよ。

花まる学習会 橋本一馬

 

島の入り口に設置された巨大な500ℓタンク。どうやって満水にするか。

 

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