【“職人”の無人島レポート②】開拓団、経験の調達(安芸津  お好み焼き屋にて)

【“職人”の無人島レポート②】開拓団、経験の調達(安芸津  お好み焼き屋にて)

開拓団受け入れに向けて、カトパンとともに無人島へ向かった”職人”こと、橋本。
“職人”による無人島レポート第2弾です。

前回のレポートはこちら
【“職人”の無人島レポート①】自宅にて、地図の作成

来島へ行くためには、まず広島の安芸津駅を目指すことになる。私の自宅からは、新幹線を乗り継いでもおよそ6時間かかる遠さだ。もちろん飛行機の方が早いが、その分高くつくので、今回は新幹線を選んだ。

コストの面だけで見れば、中京エリアの社員がサポートに行く方が安くて済む。だから、それ以上のコストをかけて、私が神奈川から行かせてもらうのであれば、その分の価値がなくてはならない。その価値のひとつとして、私が準備しておいたものが、来島の地図とコンパスの技術だった。

20時に安芸津駅に到着すると、辺りはすでに真っ暗になっていた。無人駅。集札箱に切符を入れて改札を出ると、ロータリーには、エンジンを切ったタクシーが1台「大きな古時計」のように停まっている。遠くに、一軒だけ開いている居酒屋らしき建物の明かりが見えた。近くのベンチに座って加藤さんを待つ。

加藤さんは、無人島プロジェクトの責任者を務める青年だ。通称カトパン。聞いたところによると、学生時代に花まるの野外体験で訪れた北海道の魅力に取りつかれ、その後ひとり北海道に移住し、就職してしまった男である。様々なめぐり合わせで、今はまたこうして花まるに戻っているそうだ。

カトパンを待ちながら、本物のカトパンならいいのに、と思った。「今日も収録お疲れ様」「待った?ごめんね」「いいのいいの今来たところだから」とか何とか言って、いい感じで盛り上がってきた頃に、オンライン授業を終えたばかりの偽物のカトパンが車で迎えに来て、私は現実に引き戻された。2人とも夕食がまだだったので、そのまま近くのお好み焼き屋へと向かう。

広島風お好み焼きをほおばりながら、まず自己紹介を兼ねてお互いの経歴を話した。なぜ花まるで働いているのか、それ以前にどんな仕事をしてきたのか、奥さんはいるのか彼女はいるのか。そして話は本題に入った。どんな無人島にしたいのか。

差し当たって、いよいよ来週から始まる、第1次開拓団の仕事について、話が及んだ。開拓団は、現地までの交通費が自己負担であるうえに、食費や保険料など、その他に参加経費もかかる。そして滞在期間は日帰りか1泊2日だ。多大なコストもかえりみず、島で活動できるのがわずかな時間であっても、花まるの無人島プロジェクトをサポートしたい。そんな強烈な想いを持った保護者の方が集まっている。また、参加する皆さんの経歴や背景も多様だ。元海上保安庁の方もいれば、一級建築士の方もいるし、何もできないが自分も何かをしたいという想いだけで応募しました、という方もいらっしゃるとのこと。

そんな方々に、現地でお願いする仕事はどんなものであるべきなのだろうか?と話した。もちろん、島内の清掃や草刈りが、単純作業であっても大事な仕事であることは重々承知している。しかし、それだけではもったいないのも事実だ。苦労を厭わず、強い想いと希少な経験を持った保護者の皆さんが、達成感を得て、納得して帰っていけるような仕事とは何なのだろうか?

カトパンの想いから出てきた言葉のひとつに「お金での売り買いではなく、物々交換をしたときに生まれるような人の関係を大事にしたい」というものがある。ここに、今回の開拓団のひとつのテーマが隠れているような気がした。開拓に来る皆さんが求めているのは、金銭的な利益ではまったくない。皆さんにとっての報酬は、やがてこの島にやって来る子どもたちの笑顔なのだ。そのために、今までの自分の人生で培ってきた経験、知識や技能を発揮して島の運営に貢献したい。その気持ちに応えることが、開拓団の大きな達成感と納得感につながるのではないだろうか。

無人島では、いま気づいていないものも含め、これから解決すべき様々な課題が持ち上がるはずだ。我々が困ったとき、その課題を発信すると、その都度その課題をクリアするスキルを持った保護者が名乗りを上げてくる。クラウドファンディングのような形態を持つが、調達するのは資金ではなく、経験だ。無人島を軸に、そんなコミュニティが保護者と作れるとしたら、ワクワクする。そんな話をして盛り上がった。

(つづく)

第3弾はこちら
【“職人”の無人島レポート③】買い出し、花まる丸(安芸津町内 スーパーマーケット)

【“職人”の無人島レポート】をはじめから読む

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