【無人島レポート-2022冬-】小屋づくり④

【無人島レポート-2022冬-】小屋づくり④

 二つの巻き尺を交差させて、四角形の対角線に伸ばす。その長さが同じになるまで四つ角の位置を少しずつ動かしていく。あれ? この作業、前にもやったような気がする……。それもそのはず、これで3回目だ。2度あることは3度あるのか、それとも3度目の正直となるのか。ことわざ界も注目の一戦。ただ、我ら鉄パイプ四天王には勝利への確信がある。前回はひし形、今回は正方形なのだから。

 「そんなこと言ってまた同じようなの買うんでしょ」「違うよ、今度のは辺の長さは同じだけど角が直角なんだ」「そんなの言われなければわからないじゃない。そういうのを同じようなのって言うのよ。それ本当に買う必要ある?」「いや、見た目は似てるけど性質は全然違うんだよ」「はいはい、そうやってまた押し切るつもりね。どうぞコレクションなさってください、だわ。ああもったいない」「違うんだよ……」。あるときは釣竿かもしれない。またあるときはゴルフクラブかもしれない。同じ境遇を生きる同志に、この正方形を捧げよう。

 対角線が1センチの誤差もなく揃った瞬間、目盛りを読み上げた声がそのまま歓声に変わっていた。開拓冬の陣、その勝ち鬨であった。軍配は、3度目の正直に上がった。と、田口トモロヲが言った気がした。基礎の完成である。

 「基礎ってやっぱり大事なんですね。サボテンをやるのとかも本当に大事」。ひとしきり喜び合ったあと、もっちーがしみじみとそうつぶやいた。建物の基礎も学問の基礎も同じように大事、という意味である。深い言葉だ。現に、正方形についての基礎知識がなければ、我々はいまこうして正確な小屋の基礎を作ることはできなかった。人は何かを学び身につけようとするとき、言わば自分のなかにピラミッドを建てる。かけ算ができないとわり算ができないように、下段のない上段はない。基礎は一番下ですべてを支えている。

 その先の作業は単純だ。完成した基礎に沿ってパイプを組み、角材を取り付け、壁材を貼り付けていく。基準が決まれば、あとはそれに合わせていくだけなのだ。その頃には別動隊だった「しまごろう」も合流し、5人衆となった我々は大人の本気で前半の遅れを一気に取り戻すべく奮闘した。いままでのチマチマとしたスピードとは打って変わって、作業はスムーズに進んでいく。こうして4面の壁のうち、1面が完成した。と、今回の開拓はここでタイムアップ。次回以降の開拓団に作業が引き継がれることになった。進行は緩やかでも、誰かと歩むことに開拓の意味はある。

 こうして、小屋の建設が始まった。最難関の基礎も完成し、あとは順調に組み上がっていくだろう。今度こそ、勝ったッ――「相手が勝ち誇ったとき、そいつはすでに敗北している」。

花まる学習会 橋本一馬

 

小屋の前での集合写真。
ここから建設が順調に(?)スタートした。

 

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