一度行ったことがあるとはいえ、島の山頂へ向かうのは容易ではなかった。前に通ったルートはすでに消えかけていたし、痕跡が残っていたとしても鬱蒼とした森の中ではそれに気づくことができない。元々、行きと帰りで同じ道をたどれないような場所なのだ。おまけに山道。おまけに大荷物。ただでさえ厄介な要素が3つも重なっている。普通なら、ジャングル+山道+大荷物=行かない、が正解だろう。しかし我々は違う答えを求めた。草を踏み倒し、枝を切り払い、イバラに引っかかれながら、巨大なコンテナを山頂に運び上げていく。
途中、木々の隙間から黄色く色づいた実が覗いているのを見つけた。ビワである。山の幸。これはすぐに調査だ。「調査!」とさっそくビワの木の根本まで斜面をよじ登り、実をもぎ採った。巨峰くらいの大きさ。グローブを外して皮をむき、食べても問題なさそうか見た目を確かめる。よし。口の中へ入れると、天然の甘みと香りが広がった。人の手が加わっていない果実の味。種が大きく果肉は少ないが、想像よりも甘くみずみずしい。これは何個でもいけちゃうな~、とカトパンと新しい食材の発見を喜んだ。見上げると、一面の暗緑の中で黄色い実が点々と星のように実っている。これなら子どもたちに行き渡る量が採れるだろう。本番の夏まで、持てばいいのだが。
それにしても「踏み出せばその一歩が道となる」とはよく言ったものだ。道なき道を行く人間の思考と行動、つまりは言語と運動の状態をよく表している。言行一致、文武両道、イン&アウト。自然が新たな気づきを予感させる。なおも進んで行くと、ようやく山頂にたどり着いた。コンテナを下ろして一息つく。遠くに海が見えた。海抜68m。正に海面から山頂までを登り抜いた。これで1つ目のミッションは完了である。
しかし、山でのミッションはあと2つある。水源と食材の調査と、危険エリアのマーキングだ。体力が残っているうちに一気にやってしまいたい。そこで、島内を歩き回って危険な場所に印をつけながら、その道中で水と食材を探すことにした。
いいかい。危険な場所というのは、たとえばその先が崖になっていて転落の危険があるような場所のことだ。ほかにも、落石や土砂崩れがありそうな場所や、朽ちた大木が倒れてきそうな場所を指す。ふむ。そういう場所を見極めて、蛍光色のテープを木に縛りつけていくことで危険が視認できるようになり、子どもの安全が保たれる。ふむ。でもあれ?よく考えてみると「それ以上進むと危ない所に目印をつける」には、「それ以上進むと危ないところまで行く」必要があるよなあ。あるよ。じゃあ最初の人が一番危ないじゃないか。(0・8秒)
「行くんだ、カトパン」
(つづく)
【無人島レポート-2021初夏-】ドラム缶風呂をはじめから読む
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