【無人島レポート-2021初夏-】醤油メシ③

【無人島レポート-2021初夏-】醤油メシ③

 山頂付近を散策して「それ以上進むと危険な場所」を決めると、蛍光ピンクの目印を木に縛りつけていく。しかし、ひとつ問題があることに気づいた。その印をどの向きから見るのかによって「危険な場所」が変わってしまうのである。このままでは、どこが本当に危険なのかわからない。カトパンと知恵を絞った結果、「それ以上、海側に進んではいけない印」という表現にすることで解決した。こういう部分はただ伝えても「へーよく考えられていますね」という反応が返ってくることはまずない。しかし、時間を使って詰めていることのひとつだ。そして、そういうことはあえて説明しないところに美学がある。だから説明しない。しようとも思わない。レポートに残すなんてもってのほかだ。

 それとなくカトパンに作業を譲りながら印を結びつけていき、山頂付近のマーキングが終わった。これで、子どもたちが安全なエリアで探検をすることができる。さて、来た道を戻りながら印をつけていこうか、という段になったが、私もカトパンもこのまま帰る気はなかった。自分のためじゃなくて、あくまで子どもたちのために安全なエリアを広げたいっていうか、この先のエリアの危険も把握しておきたいっていうか、あの丘の向こうには人生の大切な何かがある的なことをシェイクスピアが言ってそうっていうか。まあ本当はそうじゃないのだけれど、あえて近い表現をするならば、もうちょっと探検したい。

 次に探検するならここだ、という場所はずいぶん前から決めていた。南のビーチである。来島には3つのビーチがあるが、南のビーチだけは付近に海藻が大量に繁茂していて船をつけることができない、未だ謎の場所だった。おまけに、砂浜の両側が崖に囲まれていて海岸から歩いて近づくこともできない。浜に行く方法としていまのところ考えられるのは、山頂から南側のジャングルを抜けてビーチに降りる未踏のルートを徒歩で行くだけだった。そしてそのチャンスは、山頂にいるいまをおいてほかにない。このキャッチミーイフユーキャンなザビーチをタイタニックしてディカプリオに俺はなる。特に顔のあたりをお願いします。という意気込みで、我々は未知のエリアへと、さらに足を踏み入れていった。

(つづく)

北のビーチ。拠点の東ビーチの次によく使う。波が穏やか。
南のビーチ。海藻に阻まれ、これ以上船では近づけない未開の地。

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