【無人島レポート-2021初夏-】ドラム缶風呂②

【無人島レポート-2021初夏-】ドラム缶風呂②

大きなドラム缶を、持ち手をかえながら二人掛かりで慎重に船から降ろす。持った瞬間にはもう下ろしたくなっているU字ブロックを、せーの、で浜に投げ落とすと、砂に深い跡がついた。すべての積荷を降ろした後は、自分たちの拠点となるテントを建てる。しばらく見ないうちに、あれだけ整地したはずのキャンプサイトがすでに草に飲まれようとしていた。

島にあるテントは、すべて同じメーカーの同じモデルのものだ。大人4人が余裕で寝られる大きさがあり、島に来れば、おとなもこどもも、これを使う。慣れれば建てるのに10分もかからない。ササっと拠点をつくった後は、いよいよ目的のドラム缶風呂づくり、と思いきや、我々はまず磯に出た。食料調達のためである。

「高濱先生と行く修学旅行」では、島でハードなサバイバル体験をする日がある。米と水と調味料は用意するが、あとはすべて現地調達、というルールのサバイバルだ。獲物がとれなければ、醤油メシになる。しかし、島で何がとれて、何が食べられるのかについては、我々もいまだによくわかっていない。中には、サザエなど、漁業権の問題でとってはいけないものもあるし、フグなど毒のある生き物もいる。キノコに至っては未知の領域だ。

サバイバル やんなよやんなよ 知らんけど

というわけにはいかない。
だから、まずは自分たちでやってみるところから始める。
そんなわけで、潮が引いて磯が現れている今こそ、海の幸を探しに行くチャンスなのだった。風呂は今でなくとも沸かすことができる。

海の干満は、およそ6時間ごとに交代しながら訪れる。今がちょうど干潮なので、これから6時間かけてゆっくりと海面が上がってきて、満潮を迎える。ただし、我々が磯で活動できるのは、せいぜい1〜2時間程度だ。それを過ぎると満潮を迎えずとも磯のほとんどが海面下に沈み、歩き回ることすらできなくなる。今のうちに、潮溜まりに取り残された生き物を狙うのだ。

「干潮時、石の下には引潮に取り残されたタコが潜んでいることがよくある」という、カトパンが仕入れた地元情報に憑りつかれていた我々は、まずタコを探すことにした。ドラクエの小さなメダルのコンプリートを目指すときぐらいの本気を出して、磯にある石という石をすべて裏返していく。

途中、大量の石がゴロゴロしている場所があり、やったぜ、と喜んだのも束の間、冷静になって見渡すと、これは崖からの落石が堆積しているエリアだった。子どもの立ち入りを禁止する危険エリアに指定しなければならない。島の各所に足を運びながら、こうした危険エリアも見極めていく。

しかし、いくら石を裏返せども一向にタコは見つからない。それどころか、一匹の小魚も見つからない。このままでは本当に収穫なしで終わってしまう。今後、子どもたちに「〇〇がとれたことがある」と言えるかどうかは、無人島サバイバルの魅力やリアリティを大きく左右することになるはずだ。

海の幸 とんなよとんなよ おらんけど

というわけにはいかない。
何としても、何か食べられるものを捕らえなければ。
岩が切り立っていて、もうこれ以上進めない、という地点まで進んだところで折り返す。もうタコじゃなくてもいいんす、何か食べられそうなものはありませんか、とマッチ売りの少女のようなマインドセットで目標を変え、戻りながらカニをとることにした。カニといっても、スーパーで売っているような大きなやつではなく、サワガニの磯版のような小さなやつで、その名もイソガニという。しかし、これが結構見つかる。おほ。おほほ。カニ道楽。そんな調子で、拠点に戻るまでに10匹位のカニをとることができた。

結局、タコは見つからなかった。そもそも、タコというものはおとぎ話の中だけの存在で、足が8本もある生き物など、この世にいるわけがない。なあみんな。そんな感じで私は早々にタコを諦めていたのだが、私はこの時カトパンのタコへの執念を甘く見ていた。(続く)

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花まる子ども冒険島
モノであふれた社会とはかけ離れた島、無人島。
今日を生き抜くために、頼りになるのは自分の心。
そこは、野外体験の究極の場となる。
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