【“職人”の無人島レポート⑨】荷造り、100年先への渡し方(来島)

【“職人”の無人島レポート⑨】荷造り、100年先への渡し方(来島)

開拓団受け入れに向けて、カトパンとともに無人島へ向かった”職人”こと、橋本。
“職人”による無人島レポート第9弾です。

前回のレポートはこちら
【“職人”の無人島レポート⑧】整地、動画撮影「海水パスタ」(来島)

撤収の準備を始める。すっかり乾いたテントからポールを抜き、中に入った砂を捨ててから、2人で少しずつ畳んでいく。島に残していくものと、持って帰るものを分けていく。細かいものは大型のコンテナに収納し、開拓用の農具と一か所にまとめる。それに隙間なくブルーシートをかけて、重りで端を留める。いずれは収納用の小屋を建てたいが、今はこれでしのぐ。それが終わると、自分のバックパックをまとめる。寝袋、食器、火熾し道具、エイドパック、ナイフ、ロープ、タープ、衣類、毛布。

アウトドアの持ち物は種類が多いが、うっかり忘れると困る、というより命にかかわることがあるので、準備に気を遣う。ただ、先人の知恵は、こういう所にも行き届いているものだ。必要最低限の装備について、「5つのC」という基準がある。Cutting(切る)、Cover(覆う)、Combustion(火)、Container(器)、Cordage(ひも)。これを念頭に準備することで、忘れ物をしづらくなる。

すべての荷造りを終えると、一息ついた。

実際に島で過ごしてみて実感するのは「生きるためには、島の資源を切り崩して使わなくてはならない」という事実だ。1泊2日の間でも、我々は薪を集め、燃やし続けた。今回は、枯れていたり、落ちていたりする木で賄えたので、新たに木を切り出すことはなかったが、数か月の間、何十人も子どもや大人が来たら、簡単にはいかなくなる。今は考えられなくても、将来的には、島の環境を守るために、薪を持ち込むという判断もあり得るのかもしれない。今は、邪魔になるくらい木がたくさんあるように見えるが、これは元々、何十年も人が入らなかったことで、この島に蓄積された資源だ。

今後、島内を探検するためのルートは、何度も人が通ることではっきりと道になっていくし、それとともに、その周囲の藪も切り拓かれていくだろう。また、島の周囲の磯には牡蠣をはじめとした生き物が群生していて、食べることもできるが、これを毎回メニューに加えていたら、おそらく自然の回復が追いつかない。設備を作る際の資材についても同様で、例えば階段を作るにしても、ある程度の太さの木が何本も必要になるが、切り続ければいずれなくなる。

とても単純だが、燃やした分だけ減るし、食べた分だけ減るし、作った分だけ減るのだ。

島で人が活動するということは、多かれ少なかれ、島の環境を破壊することだとも言える。

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もちろん、無人島教育の環境を作るために、必要な開発は進めなくてはならない。ただ、同時に環境の保全にも目を向ける必要がある。いま島にどんな資源がどれくらいあるのか、私たちの活動はそれにどのくらいのダメージ与えるのか、それが回復するのにどのくらいの時間がかかるのか。情報を集め、持続的な平衡点を探らなければならない。無人島と我々が100年先まで共栄していくということは、おそらくそういうことではないかと思う。

1年後の子どもたちへの渡し方と、100年後の子どもたちへの渡し方を、同じ延長線上に考えてみたい。

船が近づいてくるのが見える。岩樋さんだろう。無人島を離れる時間が、いよいよ近づいていた。

(つづく)

第10弾はこちら
【“職人”の無人島レポート⑩】岩樋さん再び、帰路、ここで感じるもの(来島)

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