タカラモノはここに

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【タカラモノはここに⑬】『変身する鉛筆』山崎隆 2023年7・8月

 挨拶が終わり、子どもたちが教室を出ていきます。「先生、さようなら!」そう言う四年生の男の子の手には、鉛筆が裸のまま握られていました。さては筆箱にしまうのが面倒で、そのまま手で持って帰ろうとしているな……。そう思った私は声をかけました。する […]

【タカラモノはここに⑫】『得体の知れないもの』山崎隆 2023年5月

 三月の終わり、子どもたちの引率で雪国スクールに行ってきました。今回は貸し切り列車で行くコースです。上野を出発し、窓から見える景色を子どもたちと楽しみながら新潟に向かいました。  今年は桜が早く、東京ではすでに薄緑色の葉が混ざっていましたが […]

【タカラモノはここに⑪】『一つの音』山崎隆 2023年3月

 私の好きな作曲家の一人にアントニオ・カルロス・ジョビンがいます。「イパネマの娘」の作者と言ったほうがピンとくる人も多いかもしれません。彼が亡くなってからすでに三十年近い年月が経っていますが、こんにちでもテレビやラジオ、喫茶店やスーパーマー […]

【タカラモノはここに⑩】『豊かな感情 小さな言葉』山崎隆 2023年2月

 空から降ってくるものはほんとにいい、  しぐれも雹も雪もみんないい。 (『日本近代随筆選2 大地の声』岩波書店)  空から舞い降りてくる雪を眺めていると、この幸田文さんの「雪」という随筆の一節を思い出します。2022年の終わり、雪国スクー […]

【タカラモノはここに⑨】『伝えきれないもの』山崎隆 2023年1月

 年長のAくんは少しやんちゃな男の子。同じく花まるに通う小学生のお兄ちゃんの作文にもたびたび登場し、その作文によればおうちでもお兄ちゃんを振りまわしているようです。そんなAくんですが、とびきりかわいいことを言うことがあります。  ある日、「 […]

【タカラモノはここに⑧】『メロディーは覚えている』山崎隆 2022年12月

 数年前のサマースクールでの出来事です。年長の子どもたちを連れて外に出ると、青い空と緑の草原のいたるところにたくさんのトンボが飛び交う光景が広がっていました。トンボたちを追いかけながら、誰が作ったのか、かわいらしい歌を子どもたちが歌い始めま […]

【タカラモノはここに⑦】『「いま」を見つめる』山崎隆 2022年11月

 先日、栃木県の足利市に行ってきました。日本最古の学校と言われる足利学校を参観したり、森高千里さんの歌で有名な渡良瀬橋で沈む夕日を眺めてきたりしたのですが、途中、町中にある本屋にも立ち寄りました。地方の本屋には郷土の本が置いてあるので好きな […]

【タカラモノはここに⑥】『祖父に教えてもらったこと』山崎隆 2022年10月

 この仕事をしていると、多くの子どもたちがおじいちゃん、おばあちゃんのことを慕っていることがよくわかります。「今日ね、花まるが終わったらじいじのうちに行くの!」という報告を頻繁に受けます。私にも甥や姪がいますが、彼らも、私の両親でもある祖父 […]

【タカラモノはここに⑤】『影と遊ぶ』山崎隆 2022年9月

 ジョバンニがどんどん電燈の方へ下りて行きますと、いままでばけもののように、長くぼんやり、うしろへ引いていたジョバンニの影ぼうしは、だんだん濃く黒くはっきりになって、足をあげたり手を振ったり、ジョバンニの横の方へまわってくるのでした。 (『 […]

【タカラモノはここに④】『わからない』山崎隆 2022年7月

 中学生の頃、ある日ラジオからこんな曲が流れてきました。   夏が過ぎ 風あざみ  誰のあこがれにさまよう  美しい曲だな、と思いました。言わずと知れた井上陽水さんの『少年時代』です。その頃は知らない言葉を歌詞から覚えることが多い時期でした […]