タカラモノはここに

【タカラモノはここに⑩】『豊かな感情 小さな言葉』山崎隆 2023年2月

 空から降ってくるものはほんとにいい、  しぐれも雹も雪もみんないい。 (『日本近代随筆選2 大地の声』岩波書店)  空から舞い降りてくる雪を眺めていると、この幸田文さんの「雪」という随筆の一節を思い出します。2022年の終わり、雪国スクー […]

【タカラモノはここに⑨】『伝えきれないもの』山崎隆 2023年1月

 年長のAくんは少しやんちゃな男の子。同じく花まるに通う小学生のお兄ちゃんの作文にもたびたび登場し、その作文によればおうちでもお兄ちゃんを振りまわしているようです。そんなAくんですが、とびきりかわいいことを言うことがあります。  ある日、「 […]

【タカラモノはここに⑧】『メロディーは覚えている』山崎隆 2022年12月

 数年前のサマースクールでの出来事です。年長の子どもたちを連れて外に出ると、青い空と緑の草原のいたるところにたくさんのトンボが飛び交う光景が広がっていました。トンボたちを追いかけながら、誰が作ったのか、かわいらしい歌を子どもたちが歌い始めま […]

【タカラモノはここに⑦】『「いま」を見つめる』山崎隆 2022年11月

 先日、栃木県の足利市に行ってきました。日本最古の学校と言われる足利学校を参観したり、森高千里さんの歌で有名な渡良瀬橋で沈む夕日を眺めてきたりしたのですが、途中、町中にある本屋にも立ち寄りました。地方の本屋には郷土の本が置いてあるので好きな […]

【タカラモノはここに⑥】『祖父に教えてもらったこと』山崎隆 2022年10月

 この仕事をしていると、多くの子どもたちがおじいちゃん、おばあちゃんのことを慕っていることがよくわかります。「今日ね、花まるが終わったらじいじのうちに行くの!」という報告を頻繁に受けます。私にも甥や姪がいますが、彼らも、私の両親でもある祖父 […]

【タカラモノはここに⑤】『影と遊ぶ』山崎隆 2022年9月

 ジョバンニがどんどん電燈の方へ下りて行きますと、いままでばけもののように、長くぼんやり、うしろへ引いていたジョバンニの影ぼうしは、だんだん濃く黒くはっきりになって、足をあげたり手を振ったり、ジョバンニの横の方へまわってくるのでした。 (『 […]

【タカラモノはここに④】『わからない』山崎隆 2022年7月

 中学生の頃、ある日ラジオからこんな曲が流れてきました。   夏が過ぎ 風あざみ  誰のあこがれにさまよう  美しい曲だな、と思いました。言わずと知れた井上陽水さんの『少年時代』です。その頃は知らない言葉を歌詞から覚えることが多い時期でした […]

【タカラモノはここに③】『記憶のかけら』山崎隆 2022年6月

 少し前の話になりますが、東京の今年の桜はちょうど入学式に重なるところも多かったようです。桜の木の下で写真を撮っているご家庭をいくつか見かけました。教室の前では、舞い落ちる桜を帽子の中に集めようとぴょんぴょん跳ねながら遊ぶ子どもたちの姿が見 […]

【タカラモノはここに②】『「できたー!」の意味』山崎隆 2022年5月

 花まるの教室では「できたー!」という子どもたちの声が響かない日はありません。キューブが完成したとき、問題が解けたとき、子どもたちは手を広げて「できたー!」と声を上げます。  このように言葉に出すことの意義は、はたで見ているよりも大きいもの […]

【タカラモノはここに①】『虹の七色の間に』山崎隆 2022年4月

 年長の思考実験で「ぶんぶんゴマ」というものを扱います。円形の厚紙に糸を通し、両側からそれを引っ張るとグルグルと回転するという昔ながらの遊びです。その片面に上半分は青、下半分は赤できれいに塗り分け回転させると、別の色が浮かび上がってきます。 […]