【花まるリビング51】『母業、10年を超えて想うこと』勝谷里美 2025年11月

【花まるリビング51】『母業、10年を超えて想うこと』勝谷里美 2025年11月

高学年対応「行間を読む!」

最後とは知らぬ最後が過ぎてゆく その連続と思う子育て
             俵万智『未来のサイズ』(角川書店)

 長女Mが11歳を過ぎ、この短歌に共感する場面が増えてきました。
 一年程前から、M(小5)は自分の部屋で宿題をするように。リビングでぺちゃくちゃ話しながらやっていたMに対して「集中すれば早く終わるのに!」とイライラしていた時間は、気づけばなくなっていました。
 そんなある日、Mがめずらしく声をかけてきました。
「んー、どうしよっかなぁ。今日は宿題、リビングと自分の部屋のどっちでやったらいいと思う?」
 私は「どっちでもいいよ。リビングは弟妹がいて騒がしいけれど、気にならなければ机を片づけるよ」と答えました。正直、本当に「どっちでもよい」気持ちだったのですが、Mは煮え切らない様子。最終的に「リビングでやる!」と宿題を持ってきて、相変わらずおしゃべりしながら手を動かしていました。
 その日の夜、ふと気づいたのです。
「あのとき求められていたのは、『どっちでもいいよ』という返答じゃなくて、『お母さんが寂しいから、たまにはリビングで一緒にやろうよ』だったのかもしれない」と。
 行間を読めていなかった……。素直さが影を潜めてくる高学年、思春期。手を放す時期ではあるけれど、「もう手離れした」と決めつけず、その日の小さなサインを丁寧に観察する。発言は行間を読む。そうやって子どもに向き合いつづけることができたら、「最後とは知らぬ最後が過ぎて」いっても、きっと後悔はなさそうです。

母は自分の怒りをなかったことにしがち?

 ある朝、長女Mと大げんか。Mはプイッと登校し、私はイライラを抱えたまま出勤しました。途中で立ち寄ったコンビニで、Mが「おいしいからまた食べたい!」と言っていたアサイーボウルを発見。無意識のうちにかごに入れ、レジへ。
 そのときふと気づいたのです。――こんなに腹を立てているのに、子どもの好物を見つけるとつい買ってしまう母の習性に。
 「やっぱり家族っていいな」と、まとめたいわけではありません。もちろん、その側面もありますが、それ以上に書き留めておきたかったのは、母は無意識に、自分の怒りを“なかったことにする”ことが多いのではないかという気づきです。そしてそれが続くと、いつか爆発してしまう……。過去11年、母業をやってきた自分の経験をふまえて、そう感じます。

 怒りという感情に対して、“こだわりを捨てる”“さらりと受け流す”ことも大切。でも同時に、「怒りを感じた」という事実を認めることも大事だと思います。怒りは、自分のなかに譲れない何かがあった証拠。その気持ちを消さなくてもいい。
 怒り続けるのは自分もとてもしんどいので、
・何が譲れなかったのか、言葉にしてみる
・必要なら子どもに伝える、必要ないと判断したら伝えなくてもいい、自分で決める
・自分の気持ちをいたわる
自分の感情をそのように扱えるといい気がします。
 
 子どもの好物を無意識に買うのであれば、自分の好物は意識的に買って甘やかしてあげる。好きなものや好きなことにたくさん触れて、甘やかしてあげてもいい。ただ「なかったことにする」だけはしないでほしい――。
 過去の私に、そしていま現在子育てに奮闘している多くのお母さんに、伝えたいメッセージです。

花まる学習会 勝谷里美


🌸著者|勝谷 里美

勝谷里美 花まる学習会の教室長を担当しながら、花まる学習会や公立小学校向けの教材開発や、書籍出版に携わる。現在は、3児の母として子育てに奮闘中。著書に『東大脳ドリルこくご伝える力編』『東大脳ドリルかんじ初級』『東大脳ドリルさんすう初級』(学研プラス)ほか

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