【花まるリビング⑮】『宿題バトル経過報告 ~子どもを見る眼の解像度を低くしてみる』勝谷里美 2022年7月

【花まるリビング⑮】『宿題バトル経過報告 ~子どもを見る眼の解像度を低くしてみる』勝谷里美 2022年7月

 昨年の秋、私が産休・育休に入ったことにより、二年生の長女が学童保育を退所。家で過ごす時間が増え、勃発したのが宿題バトルです。学童でしていた宿題を家ですることに。たいした量ではないしリズムをつかめば大丈夫、と高を括っていたら(なんで、こんなに宿題をやりたがらない!?)と驚愕の事態が半年以上続いています。

反省①「帰ったらすぐ宿題」というルールにしたかったが「友達と遊べない」「習い事の前にテレビを見たい」などの要求に根負け。弟の迎えもあるし(夜でいっか)と基準をぶらしてしまった。

反省② 寝る時刻を伝え、開始時刻は本人に任せる作戦。弟や妹がぐずぐず言い始める時間にようやく開始。本人も疲れているので「ママがランドセルあけてよ!」と怒り始める。「自分のことは自分でやるよ」と穏やかに返すのは二回が限界、三回目には怒り爆発。このあたりで本人にとって「宿題=いやな時間」になってきた、まずい、軌道修正したいと思うが毎日繰り返し。悪循環。

 あるアニメで母が「宿題やったの!?」と息子を怒るのを見て、以前の私は「子どもに宿題=いやなものという先入観を植えつけてしまわないかなぁ」など呑気に考えていたのですが、いまなら母の気持ちがよくわかります。毎日、やる・やらないの子どものペースに巻き込まれるのが、本当につらい。

 打開策としては、親側の「無の境地」「凪の気持ち(カッとしない)」それに加えて、「宿題をやる時間=ハッピーオーラの漂う時間」を演出していくことでしょうか。私がイライラしていると、それが子どもに伝わりますます意固地になる。親が宿題の時間にわくわくして見せることで、少し取り掛かりはよくなりました。
 だけど。
「どうして、私がこんなに毎日、わくわくを演出しなくてはいけないの」と叫びたくなることもあります。(この時点で、大人の“わざと感”は子どもに伝わりますよね。)悪循環は抜け出せません。

 そんなとき、学校の面談がありました。
私「宿題に文句が多い」
先生「学校では素直ですよ」
私「宿題をするときの姿勢が悪い」
先生「注意するほどではないですよ」
など、受け止めてもらえて、ちょっとすっきりしたあとで気づきました。

―あれ?私、「宿題をしない場面」に焦点をあてて、ピンポイントでできていないことばかり数え上げていたかも。カメラでいうと「宿題をしない」にズームしていって、解像度の高いカメラで連射して、細かいことをあげつらっている感じ―

 どうやら、近づいて見すぎていたのかもしれません。解像度高く子どもを見ることも大事ですが、「心の平穏が保てないかもしれない」と思ったら、あえて一歩引く。「ぎりぎりまで宿題に取り掛からず、姿勢が悪く、雑な字で宿題をやっている子」ととらえるのではなく、あえて解像度を低くして、「宿題をやっている子」とだけ認識するというのも一手かもしれないな、と発想の転換をすると、気持ちは楽になりました。

 『やらなければならないことをすっとやれることが大人になってからも大事』というのは、花まるでもよく伝えていることです。だから、私も「宿題やりなさい!」とやっきになっていましたが、目指すゴールまで、てくてく直進していける子もいれば、山あり谷あり紆余曲折で進む子もいる。優劣をつける必要はなく歩き方が違うだけ、と思って、母である自分の心を穏やかに保てる方法を選んでいこう、と思った事例でした。

花まる学習会 勝谷里美


🌸著者|勝谷 里美

勝谷里美 花まる学習会の教室長を担当しながら、花まる学習会や公立小学校向けの教材開発や、書籍出版に携わる。現在は、3児の母として子育てに奮闘中。著書に『東大脳ドリルこくご伝える力編』『東大脳ドリルかんじ初級』『東大脳ドリルさんすう初級』(学研プラス)ほか

花まる教室長の子育て奮闘記カテゴリの最新記事