【花まるリビング㉘】『探偵、または、クイズ番組の回答者になったつもりで』勝谷里美 2023年10月

【花まるリビング㉘】『探偵、または、クイズ番組の回答者になったつもりで』勝谷里美 2023年10月

 子どもが発する言葉のなかで、「それを聞くと“必ず”イライラする」というものはありますか?
 私は、あります。「もうYouTubeを見る時間は終わりだよ」と声をかけたあとに、「次、何する? 何したらいいの?」と言われたときは、ほぼ100%の確率で、イライラしてしまいます。
 「いつもご機嫌な母でいるのは難しいからイライラするのは仕方ない」と、母9年目で、あきらめていた部分があるのですが、もう少しこのイライラを突き詰めてみようと思うきっかけがありました。

 この花まるだよりでもコラム連載を持つ弊社のRinと話していたとき。
 ――親と子どもは違う生きもの。まったくタイプが違う場合は、「親側に、子どもにどう対応していいかの引き出しがない場合があるよね」と言われて、はっとしました。
 この「引き出し」というイメージが、私のなかのイライラとつながった感覚がありました。

 私自身はひとりで遊ぶのが苦ではないタイプで、本を読んだり、庭や近くの公園をぶらぶらしたりすれば満足するタイプ。「次に何をしたらいいのか、自分で決められない」という感覚になったことがないように思うのです(忘れているだけかもしれないのですが…)。
 だからこそ、「次、何したらいいの?」と子どもが聞いてくると、自分のなかにそれへの返答の引き出しがない(共感してあげられない)。また「自分で考えて動く子になることが大切」という想いがあるのに、目の前の子がそこからかけ離れていることにも、イライラしてしまう。なかなか根深い。
 分析はここまでで、じゃあ何をどうしたらいいのかな~、と頭の片隅に留めていたある朝。

 登校する直前に、小1の長男が「今日、あさがおの鉢を学校に持っていきたい」と駄々をこね始めました。来週の月曜日までに親が学校に持ってきてください、と言われている鉢。今日は、お母さんも仕事だし朝持っていくのは無理だよ、と伝えても、「やだ! 絶対に朝、持ってきて」とらちがあかない。

 この段階で、私のなかにある既存の引き出しは、
①なだめすかす
②無理なことは無理と、淡々と伝える
③無理って言ってるでしょー! と怒り爆発

 ただ、「ベストアンサーとなりそうな引き出しは、ない」と俯瞰して考えることができたので、ちょっと引き出しを増やせないか、もう少し子どもを観察してみることにしました。

…そういえば、昨日の帰りに「中休みに色水で遊んだ」という話を楽しそうにしていた。
…ん? 手に、持って帰ってきた色水を持っている。
…つまり、鉢を持っていかなくても、色水ができれば満足する?
…花の部分だけ摘んで持っていけばいいのでは?
 
と推理して、その提案をしてみると、けろっと表情を変えた長男は「いいよ!」と快諾してくれました。つまり「鉢を持っていきたい」の言葉の裏にかくれていたのは、「自分のあさがおで色水をしたい」という要求だった、ということで、一件落着です。

 この事例で、私が子ども対応の「引き出しを増やせた」わけではないのですが、引き出しがない・共感できない、と思ったときは、観察力×推理力×ひらめき力などを使って、子どもの心に近づいて行くことを意識してみよう、と思わされました。
 堅苦しく考えず、探偵、もしくは、クイズ番組の回答者になったつもりで。
 
 時には「そういうことだったのか! この謎解き、難しすぎるわ‼」と、突っ込みを楽しみながら。 

 日々の子育てに、少しでも活きるTIPSになるといいな、と思います。

花まる学習会 勝谷里美


🌸著者|勝谷 里美

勝谷里美 花まる学習会の教室長を担当しながら、花まる学習会や公立小学校向けの教材開発や、書籍出版に携わる。現在は、3児の母として子育てに奮闘中。著書に『東大脳ドリルこくご伝える力編』『東大脳ドリルかんじ初級』『東大脳ドリルさんすう初級』(学研プラス)ほか

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