【Dr.カニーのおうちメンタルケア】『やりたいと言って始めた習い事なのに、行きたくないと言っている……』蟹江 絢子 2025年9月

【Dr.カニーのおうちメンタルケア】『やりたいと言って始めた習い事なのに、行きたくないと言っている……』蟹江 絢子 2025年9月

【今月のお悩み】
やりたいと言って始めた習い事なのに、行きたくないと言っている……。
やめたい理由を尋ねても、はっきりしない。

そんなとき、親としては続けさせるべきなのか、やめさせてもいいのか迷うのではないでしょうか。
今回は精神科医の視点から、習い事への向き合い方や、「行きたくない」という子どもの気持ちの背景、そしてやめどきについてお伝えします。

子どもが理由をうまく言えないのは自然なこと

理由を聞いても、「なんとなく」「つまらない」といった漠然とした言葉しか出てこないこともあります。
でもそれは、言葉にできないだけで、心のなかでは葛藤や困りごとを抱えているのかも。たとえば、こんな思いが隠れているかもしれません。

「行きたくない」の裏にある気持ちとは?

☑まわりと比べて自信をなくしている
何でもそつなくこなせる子ほど、「一番じゃないならやりたくない」と感じやすいもの。
▶▶「最初はうまくいかなくても、挑戦することが大事だよ」と励ましたり、居心地の良い場づくりを工夫したりすることが効果的です。

☑成長の壁にぶつかっている
最初は好調だった子が、まわりの成長に追いつかれて伸び悩み、もどかしさを感じていることも。
▶▶「いまはゆっくりでも、練習を続けていれば変わるよ」と、先を見通せる言葉で支えることが大切です。

☑先生が厳しくてつらい
繊細な子どもは、「叱られるのが怖い」「ミスを指摘されるのがつらい」といった不安から足が重くなることも。
▶▶厳しさに少しずつ慣れていく経験や、気持ちの切り替え方を学ぶ場としてとらえることもできます。

  

さらに、
☑期待に応えようと頑張りすぎて疲れている
☑習い事での人間関係に悩んでいる
☑やる意味を見失っている
☑ほかの活動とのバランスがとれていない
なども、わかりにくい「行きたくない」理由のひとつです。

習い事にも「成長曲線」がある

なにかに取り組むときには、段階ごとの対応法があります。
たとえば、
◎ 始めたばかりの時期:送迎やちょっとしたご褒美などのサポートで安心感を与える
◎ やる気が出てきた時期:本人の「もっとやりたい」を応援する
◎ 伸び悩みの時期:どこでつまずいているかを先生と一緒に確認し、必要に応じて工夫を加える
いま、子どもがどの段階にいるのかを大人が理解し、焦らず見守ることが、次の一歩につながります。

やめるときは「中途半端」ではなく「やりきった感」を

やめる決断も、悪いことではありません。ただ、「行きたくない」と言った直後にやめてしまうと、「自分は何をやっても続かない」と思ってしまうことがあります。
できれば、「発表会まで頑張ろう」「3か月続けてみよう」といった区切りを設けて、「やりきった」という感覚をもたせてあげましょう。また、短期間だけ挑戦できるプログラムや、さまざまな活動に触れられる習い事を選ぶのもひとつの手です。

習い事=将来の仕事 でなくていい

最後に、もうひとつ伝えたい視点があります。習い事は、将来の仕事のためだけではなく、「人生を楽しむ力を育てる」ためのものでもあります。
たとえば、「一生の趣味」が見つかれば、それは財産です。趣味は孤独やメンタル不調の予防にもつながります。アメリカの体育では「運動を習慣や趣味にする」ことが重視されています。
習い事を続けるかどうかの選択が、将来につながる前向きな経験になるよう、寄り添っていきたいですね。

 


蟹江 絢子(かにえ あやこ)

東京の大学病院にて児童精神科医として臨床に携わる傍ら、妊産婦やアスリート、神経発達症、精神疾患を対象とした認知行動療法の研究を行う。VRやアプリを活用した認知行動療法のプロダクト開発にも取り組み、精神医学・心理学の啓蒙活動を一般の方や教育業界向けに展開。二児の母としての経験も活かし、親としての目線で日々の生活や子育てに役立つ情報を発信中。

 

※花まるだより2025年9月号掲載

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