【今月のお悩み】
学校の先生とあわないようで、学校でのトラブルが増えてきました。うまくいかないことがあると自分のなかで処理できず、友達にも手を出してしまうようです。どのような声かけがいいのか、根本的な解決にはならないのですが、サポートの仕方を試行錯誤しています。学校で安心して過ごしてもらいたいのですが、親として見守るしかないのでしょうか。
「友達に手を出してしまう子」をどう支えるか
学校で先生とうまくいかない、思い通りならないと手が出てしまう―
そんな日々が続くと、親としても心配になりますね。こうしたケースでは、学校からの連絡が頻回になり、保護者の方も心をすり減らしてしまうことが少なくありません。本人やご家庭、先生ができることのヒントをお届けします。
「手が出る」行動の背景を理解する
たとえば子どもが友達を叩いてしまうとき、その背景にはさまざまな感情が隠れています。
☑「言われた言葉を受け入れられなかった」
☑「思い通りにいかず悔しかった」
☑「自分を否定された気がした」
☑「かまってほしかったのに無視されたと感じた」など。
感情を言葉にできると脳が働き冷静になれますが、「ざわっとした」「もやっとした」など感覚だけだと、"叩く“という行動で表してしまう場合もあります。そのようなときは、気持ちを頭のなかで言葉にする練習が必要です。
「きっかけ」を減らす工夫
叩く場面を減らすためには、そもそも「叩いてしまう前」に自分でその場を離れたり、落ち着く時間を確保したりといった工夫が役立ちます。
私はよくお子さんにこう伝えます。
「"ざわっ”としたら、『あっ、ちょっと待って!』って言って、トイレでもどこでもいいから一旦離れよう。『逃げるが勝ち』っていう言葉もあるくらいだから」と。
このように"感情のクールダウン“の習慣を身につけることで、衝動的な行動が少しずつ減っていきます。
また、先生や周囲の大人が、「叩くきっかけになりやすい子」との距離を配慮したり、刺激の多い時期(テスト前、行事前など)の対応を調整したりすることも、有効な支援になります。
周囲の対応も見直す
叩いた直後に大人がすぐ叱り、謝罪を強いると、「自分の気持ちは聞いてもらえなかった」と感じてしまう子もいます。また、「叩けば注目される」と学んでしまうと、無意識のうちにその行動が増えてしまうこともあります。
そこで大切なのが、「叩いたことで損をする経験」を積むことです。たとえば、「友達と一緒に遊ぶ時間が減る」「楽しい活動に参加できない」といったことになると、叩く行動が減る可能性があります。
謝り方も、練習が必要
「謝らせる」のではなく、「謝れるように導く」という視点が大切です。謝罪の基本的な流れは次の通りです。
①「声をかける」②「相手の気持ちを理解したことを伝える」③「自分の事情も伝える」④「今後どうするかを伝える」
たとえばこんな言い方があります。「ごめんね。痛かったよね。言われたことが違うんだと思って、叩いちゃったの、ごめんね。傷つけるつもりはなかったんだ。今度はちゃんと言葉で伝えたり、離れたりするようにするね」
子どもなりの言葉に置き換えて、一緒に練習してみるのもおすすめです。
親としてできること
ご家庭でのサポートとしては、「心の状態はどうかな?」と、子どものイライラ度や不安度に目を向けることが大切です。
また、担任の先生が変わるタイミングで、「ルールに厳しく融通がきかないところがある。思い通りにならないと怒りが咄嗟的に出やすい」などと伝えておくことで、対応の質が変わることもあります。
頻回に手が出るといった場合、子どもが学校で安心して過ごすためには、家庭と学校が「チーム」になり同じ方向性をもって支援することが必要です。
叩いてしまう背景にある気持ちに言葉が与えられると、気持ちに折り合いをつけやすくなります。周囲ができる工夫をしつつ、かかわりながら成長を見守りましょう。
蟹江 絢子(かにえ あやこ)
東京の大学病院にて児童精神科医として臨床に携わる傍ら、妊産婦やアスリート、神経発達症、精神疾患を対象とした認知行動療法の研究を行う。VRやアプリを活用した認知行動療法のプロダクト開発にも取り組み、精神医学・心理学の啓蒙活動を一般の方や教育業界向けに展開。二児の母としての経験も活かし、親としての目線で日々の生活や子育てに役立つ情報を発信中。
※花まるだより2025年10月号掲載