年少の次女が、文字に興味を持ちはじめました。名前に「さ」が入っているのですが、「『さ』、書けるよー」と見せてくれたのが、こちら。

「お! なかなか上手に書けている!」親の欲目が出てきます。「もっと書きたいー!」と言ってくれるのをいいことに、いろいろな文字を書かせてみました。



しかし、「た」「く」あたりになってくると、つい(ここは、はねないよ)(ここは、ちがうよ)と「正しい文字に」直したくなる親心がムクムクと……。そんなときふと思い出したのが、先日の次女とのやりとりです。
私が、小三長男のプリント採点で「☆」マークをつけていたとき、次女が驚愕の表情で「ママ、いま、なにやった!?」と尋ねてきました。

どうやら、一筆書きで星マークが描けることにびっくりしたようで、「もう1回、もう1回やってよ!」と何度もせがまれました。これぐらいのことで……といったら語弊があるかもしれませんが、大人にとっては当たり前のことでも、次女にとっては魔法のような出来事だったのでしょう。
この出来事をふまえて考えてみると、次女はいまはきっと「正しく書くこと」を欲しているのではなく、「文字を形として楽しむこと」に心惹かれているのかもしれないと気づきました。ならば、いまは、正しく書く練習をするのではなく、「ここ、くねっとしているね」「ここが重なっているね」などの発見を親子で楽しむだけで十分。文字のドリルを購入しようと動き出そうとしていた手を、そっと止めました。あぶない、あぶない。
子どもが何かできるようになるのはとても嬉しいのが親心。何かの萌芽があると、すぐにどんどん水や肥料を与えて、ぐんぐん伸ばしたくなってしまうことは多いと思うのですが、そんなに急がなくてもいい。
AIには代替できない「思考力」や「創造力」が重視される時代です。その土台となるのは、子どもたちの「好奇心」や「好きという気持ち」。「好き」と躍動する心を摘んでしまうことなく、子どもたちの幼少期の貴重な瞬間を見守っていこう、と改めて思った出来事でした。
花まる学習会 勝谷里美
🌸著者|勝谷 里美
花まる学習会の教室長を担当しながら、花まる学習会や公立小学校向けの教材開発や、書籍出版に携わる。現在は、3児の母として子育てに奮闘中。著書に『東大脳ドリルこくご伝える力編』『東大脳ドリルかんじ初級』『東大脳ドリルさんすう初級』(学研プラス)ほか