【花まるリビング㊽】『「がんばったね〜」「 シール♪」』『何十年後の、ほめ言葉』勝谷里美 2025年7・8月

【花まるリビング㊽】『「がんばったね〜」「 シール♪」』『何十年後の、ほめ言葉』勝谷里美 2025年7・8月

「がんばったね〜」「 シール♪」

 未就園児から低学年くらいまでの子どもに学習系のことを伝えるとき、私は擬音語や擬態語、リズム、繰り返しの言葉を意識して使っています。「さあ勉強!」と構えるより、遊びの延長で学ぶこの時期には楽しい雰囲気づくりがとても大切だと感じるからです。

 先日、小三の長男が宿題をしていると、3歳の次女も「しゅくだいやる〜!」と張りきってドリルを持ってきました。1ページ終わると「合格シール」が貼れる形式のもの。まだひとりでは進められないので、私が問題を読んだり、「シャーッ シャーッ」「ぐるりんと」などと言葉を添えて、一緒に進めます。

 このときに参考にしているのが、絵本(特に字が少なく・絵が多めのもの)の読み聞かせをする際の口調です。シンプルなのに的確で、繰り返しが楽しく、子どもを惹きつける力があります。そういった本の読み聞かせの口調を意識すると、「教える」というより「一緒に楽しむ」空気が生まれるのも良いところです。

 ちなみに、「合格シール」を貼るとき、私が「がんばったね〜♪」と言うと、次女が「シール〜♪」と節をつけて返すのが定番に。その様子を横で見ていた長男が、「ねぇ、そのノリやめてくれない? 集中できない」と冷たいひと言。まだ幼さも残る長男ですが、こういう技が通用しない年齢になってきたんだな……と成長も感じたひとコマでした。


何十年後の、ほめ言葉

 ある花まる教室長に「小四のとき、作文で“さいわい”と“あいにく”を間違えて悔しかった。あと、本を読んでいて『快い』という漢字だけがどうしても覚えられなくて、何度も親に聞いた記憶がある」と話したところ、「え、それを覚えてるなんて、言葉にすごく敏感なんだね!」と驚かれました。自分としては小学生時代の記憶のひとつでしかなく、あまり「言葉」という部分にフォーカスしていなかったので、何十年と時を経て、ほめてもらった気分でした。

 また別のとき。友人に「小学生の頃は三つ下の弟を連れて、よく友達の家に遊びに行っていた」と話すと、「それはお母さん、助かっただろうねえ」と言われてハッとしました。よく「弟と仲良しだったんだね」とは言われても、「お母さん目線」での言葉は新鮮で、(そっか、私はお母さんを助けていたのかぁ)と、こそばゆい気持ちでした。いま、自分が母になったからこそ身にしみたのもあるでしょう。そして、思春期に「お母さんは、兄と弟ばかりかまう!」と拗ねていた自分にこの言葉を届けてあげたかったな……とも思った次第です。

 「ある出来事」の、「何を切り取るか」は本当に人それぞれ。だからこそ、私自身も子どもとの出来事で「何を切り取るか」は、繊細に意識して、いい言葉はどんどん伝えていきたい。また、私ひとりだと見えない部分はたくさんあるので、外の人にもたくさん見てもらおう、そんなことに気づきました。そして、花まる教室にお通いの方には、「外の人」として、“花まるの先生”も、ぜひ活用していただけると嬉しく思います。

花まる学習会 勝谷里美


🌸著者|勝谷 里美

勝谷里美 花まる学習会の教室長を担当しながら、花まる学習会や公立小学校向けの教材開発や、書籍出版に携わる。現在は、3児の母として子育てに奮闘中。著書に『東大脳ドリルこくご伝える力編』『東大脳ドリルかんじ初級』『東大脳ドリルさんすう初級』(学研プラス)ほか

花まる教室長の子育て奮闘記カテゴリの最新記事