【花まるリビング㉞】『子育てにおける「あそぶ力」』勝谷里美 2024年4月

【花まるリビング㉞】『子育てにおける「あそぶ力」』勝谷里美 2024年4月

 2才の次女が、この冬、ユニ○ロのキルト生地のパジャマを着ていました。着心地がよさそうだったので、7才の長男にも同じシリーズで柄が異なるものを買ってあげたところ、
「あー、これね。R(次女)のパジャマの上位互換でしょ」とドヤ顔で一言。
……うん、えーっと、どうしようかな。
「上位互換」という難しい言葉を覚えていて、使ってみたのはえらい。ドヤ顔はかわいい。でも、厳密に言うと、使い方は間違っている気がする。
 「上位互換」という言葉を検索。【機能や性能で上位に位置づけられるソフトウエアなどの製品が、下位の製品と互換性をもつこと】らしい。今回の場合は、長男のパジャマと次女のパジャマに上下性はないし、互換性もないので、適当な言葉ではない。言いたいことはわからなくもないけれど。
 代表の高濱がよく「家庭で正しい言葉を使う習慣が大事」「言葉の厳密な使い分けは大事」と言っているので、ここは正しい意味を伝えたほうがいいのかな。でも、かみくだいて説明するのが難しいな、なんて、思っていたら、長女と次女に別のことで話しかけられて、そちらを対応していたら、すっかり正しい意味を伝えるのを忘れて、一日が終わってしまいました。
 ここで、「これができなかった」にフォーカスするか、「まあ、かわいい言い間違いを収集できてよかったな」にフォーカスするか。ある意味、自分の心構え次第。長女のときは気にしていたけれど、さすがに三人目のいまは、「まぁ、いっか」を選択できるようになりました。子育ては、マニュアル通りにいかないことの連続、「これができない」「もっとこうしたかった」を数え出すときりがないので、切り替える力も大切だなぁと思います。

 また、「互換」という言葉から連想したことがあります。
 2才の次女は、最近自分で着替えたがることがあります。それに対しての私の行動。
・何も予定のない休日の朝は……【見守る】
・お出かけ前は……【待つ】
・平日の朝、きょうだい三人の送り出し準備をしているときは……【耐える】
 次女も自分も同じ行動をしているのですが、その時々の環境とそれに伴う自分の心の揺れ動きによって、自分の行動の解釈が変わり、行動自体の名前も変わってきます。そして【見守る】<【待つ】<【耐える】の順で、親側の負荷がどんどん重たくなっていくように思うのです。
 同じ行動なのに、自分のとらえ方次第で、行動を負荷がかかるものへと互換してしまっているなぁ。どうせ同じ行動ならば、【耐える】ではなく【見守る】と定義したほうが、自分の心はとても楽なのに、環境がそれをゆるさず、(なんで子育てってこんなに耐えなきゃいけないんだろう……)と思うのをやめられない自分も正直いるのです。
 ただ、やめられないとしても「あー自分はいま、【耐える】という言葉を使ってしまうぐらいつらいんだなぁ。頑張っているんだなぁ」と俯瞰してみる。それだけでも、少し、心は軽くなるかもしれません。

 切り替える力。俯瞰してみる力。これらを花まるでは【あそぶ力】と定義しています。ものごとを柔軟に考えられる力で、「切り替える」「俯瞰する」「別解を楽しむ」「再試行する」「ユーモア力」などが含まれるものです。花まるの授業を通じて、子どもたちに身につけてほしい力ですが、これらは、子育てにおいてもすごく役立つものだと日々感じています。
 自分の心を切り替えて、俯瞰して。
 子どもとの日常が、少し息苦しくなってしまったとき、おまじないのように、大切にしたい言葉です。

花まる学習会 勝谷里美


🌸著者|勝谷 里美

勝谷里美 花まる学習会の教室長を担当しながら、花まる学習会や公立小学校向けの教材開発や、書籍出版に携わる。現在は、3児の母として子育てに奮闘中。著書に『東大脳ドリルこくご伝える力編』『東大脳ドリルかんじ初級』『東大脳ドリルさんすう初級』(学研プラス)ほか

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