【花まるリビング㉝】『子育ては育児書より奇なり、の一年後』勝谷里美 2024年3月

【花まるリビング㉝】『子育ては育児書より奇なり、の一年後』勝谷里美 2024年3月

 一番下の子が2才を過ぎ、9才長女・7才長男・2才次女の3人でテレビを楽しめるようになってきました。そう、『アンパンマン』です。長女は、まぁ、“付き合ってあげている”という感じですが、子どもたちが肩を寄せ合ってテレビを観ている背中を「口ごたえが増えてきたとしても、まだまだ子どもだな」と穏やかな気持ちで眺めていたのですが……。

 ある日のアンパンマンを観た長女。「ねー、ドキンちゃんが、なんでしょくぱんまんが好きか全然わかんない! かっこつけてるだけじゃん!!」

 また、ある日、“たぬきおに”が出てくるアンパンマンの回を観た長男。“たぬきおに”は、【バタコさんが大好きだから、バタコさんの言うことを聞いて悪さをしない】というキャラクターなのですが、「えー、やだやだ、恥ずかしい」プチッとテレビの電源を切ってしまいました。

 小さい頃と同じアンパンマンを観ていても、解釈の違いに成長があらわれるものですね。少しずつ思春期、大人へと近づいているのだなぁと感慨深くなりました。

 成長を感じたことをきっかけに、WEBの計算サイトを使って、子育ての残りの日数を逆算してみることにしました。

◆長女が18歳になる日まであとどれくらい?
 日数 3061日
 週数 437週 +2日
 月数 100か月 +18日
 年数 8年 +139日

 長女はいま9歳なので、18歳成人をゴールとするならば、ちょうど折り返しです。ただ、どんどん子どもの世界は広がるでしょうから、この残りの3061日は、前半9年の濃さほどは一緒に過ごさなくなるのだろうな。大人の自分にとって、9年前なんて“つい最近”だから、きっと長女の子育て後半9年も、あっという間に過ぎてしまうのでしょう。 

 小さい子を育てていると、「いまが一番かわいい時期だねぇ」「終わってしまうとあっという間だから、子どもが小さいうちに一緒に過ごせる時間を大切にね」と言われることもあります。それは本当にそう、とはいえ、それぞれの親が、それぞれなりに抱えている“いまの子育てが大変”が緩和されることにはならないんだよなぁ、とも思います。

 「いまは大変だけれど、『かわいい時期だから』『一時期だけだから』親は我慢して過ごす」ではなく、どちらかというと、私自身は「これから先も楽しいことはたくさんあるけれど、『いまはいましかないから』親であるあなたも子どもと一緒に楽しんで過ごしてね」というスタンスが好きです。

 これはどちらかというと精神論で、「子育てが大変」が物理的に解決されるものではありません。ただ、自分が楽しもう、という心構えが、少しでも穏やかな日常につながるよう、祈りもこめて、心のなかに置いておきたいと思っています。

 2023年の4月、このコラムで「子育ては育児書よりも奇なり」だと思う、と書かせていただきました。育児書や教育書などに書いてある通りに実践しようとしても、結果、うまくいかないことのほうが多くて、思ってもみないような反応ばかりかえってくる。

 1年をふりかえると、やっぱり予想外のことの連続で、その都度あたふた振り回されて、疲弊して、うまくいかないなぁ、と思う子育て。でも、“自分が楽しもう”というスタンスでいることで、きっと、その「奇」をおもしろいなぁと、楽しめるようにもなってくる気がします。

 私自身、いま、その「奇」=大変だ、ではなく、「奇」=おもしろいね、と変換していく練習のさなかです。そしていつか、子どもと一緒にいられる、このいまが「奇」跡だね、とも思えるようにーー。

 春、何かしら新しいことが始まる方が多いかと思います。みなさまが、あせらずゆっくり丁寧に、日々の生活を楽しみながら、子育ての道を歩んでいくのに、4月からも花まる学習会が少しでもお役に立てたら嬉しいです。

花まる学習会 勝谷里美


🌸著者|勝谷 里美

勝谷里美 花まる学習会の教室長を担当しながら、花まる学習会や公立小学校向けの教材開発や、書籍出版に携わる。現在は、3児の母として子育てに奮闘中。著書に『東大脳ドリルこくご伝える力編』『東大脳ドリルかんじ初級』『東大脳ドリルさんすう初級』(学研プラス)ほか

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