【花まるコラム】『卒業しても会いたい』青山裕介

【花まるコラム】『卒業しても会いたい』青山裕介

 3月は、6年生をはじめ、新しい環境で頑張ると決めた子どもたちを送り出す季節です。今年も子どもたちが前へと進む嬉しさ半分、教室を卒業する悲しさ半分……複雑な気持ちでこの時期を迎えています。

 6年生のYちゃんも、この3月で卒業。彼女は4年生の進級前に花まる学習会を退会していました。小学校入学のタイミングに家庭の事情で引っ越し、毎週教室まで新幹線で通塾することに。教室では明るい、面倒見のいいお姉さんでしたが、お母さん曰く「学校ではまったく喋らない、場面緘黙(ばめんかんもく)」でした。何が彼女をそうさせたのかについてはここでは割愛しますが、少なくとも彼女にとって花まるの教室は、自分らしくいられる場所になっていました。ご家族の理解や彼女の強い意志があって3年生までは新幹線通塾を続けていましたが、4年生からの高学年コースでは授業時間が変わることもあり、ついに通える範疇を超えてしまいました。苦渋の決断での退会でした。3月の最終授業では、彼女の目に光るものがありました。次第にそれが頬を伝い止まらなくなり、授業が終わる挨拶のときには、大泣き。私も一緒に泣きながら写真を撮ったあの日のことをいまでも鮮明に覚えています。

 しかしYちゃんとの繋がりは、ここで切れたわけではありませんでした。Yちゃんが6年生になったある日、ひょんなことからオンラインで彼女と再会することになったのです。私は久しぶりの再会に心を弾ませながら彼女が画面に現れるのを待ちます。そしてしばらくすると、画面に「Y」の名前とともに顔がうつりました。
「……」
「……」
互いに言葉が出ません。
私は何かを話したいのに、想いを伝えたいのに、言葉が出てきません。
「……Y?」
「……はい」
「Y、大きくなったね」
「……はい!」
 涙で別れたあの日で止まった時計の針が動き出した気がしました。そして、互いに涙を流して再会を喜びました。そこからはさまざまな話をしましたが、いまは元気に学校へ通えていて「親友」と呼べる友達もいるとのこと。私は嬉しい気持ちになりました。
「もしまたYが話したいと思ったら、1週間後でもいいし1か月後でもいい。今日の続きを話そう。あのときはもう二度と会えないと思ったけれど、こうしてまた会えるってわかったんだからさ」
「はい、そうですね!」
2人で2時間以上話したでしょうか。次の再会を心待ちにしながら、最後は「笑顔」で別れました。

 新しい環境でがんばるために、花まる学習会を卒業する子どもたち。Yちゃんのように卒業しても「花まるに通ってよかったな」「また会いたいな」と思ってもらえるなら、私にとってこれほど嬉しいことはありません。     

 

花まる学習会 青山裕介(2022年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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