【花まるコラム】『輝きを放つその一瞬』西山由乃

【花まるコラム】『輝きを放つその一瞬』西山由乃

 「あなたは何が好きですか?」そう聞かれたとき、私には思い浮かべるものがたくさんあります。子ども、授業はもちろん、アイドル、お米、夕焼け、洋服、寝ること。ほかにも美容院でシャンプーをしてもらっているとき、小さなことで大爆笑をしているとき、洗い立てのタオルの匂い。言い出したらきりがないくらいです。これほどにも好きだと言えるものがあることは幸せだと自分でも思います。
 そのなかでも、永遠に語り続けられるほど好きなものが「フィルムカメラ」です。きっかけは大学の卒業間際、普通の写真ではなく何か別の形で思い出を残したいという思いで買った“写ルンです”でした。フィルム特有の少し褪せた色とざらっとした写り、現像した写真を見たときの思い出が記憶の底からぶわっと蘇ってくる感覚。あの感覚が何度も私の心を掴んでいく、最も心が躍る瞬間です。最近では、フィルムの高騰により貴重なものになったからこそ、一枚一枚大切に撮ろうという思いがより強くなりました。まだまだ語ることができるのですが、今回はここまでにしておきます。

 先日、高学年plusコースの教室コンテンツで「好きなものプレゼンテーション」をおこないました。子どもたちが自分の好きなものを魅力的に語りつくす回です。好きなアニメや漫画、スポーツ選手、自然観察など。なぜ好きになったのか、どこが好きなのかが伝わるように一生懸命プレゼンテーションをします。自然と増える身振り手振りや、少し早口になる様子だけで本当に好きなのだということが聞いている側に伝わってきました。
 2チームに分かれて予選をおこない、各チームの代表者が決勝戦に進むという方法で優勝を決めます。全員が目指すのはもちろん優勝です。決勝に進んだのは「チョコレート」について語った5年生のHくんと、「ゲーム」について語った6年生のKくんでした。代表として全員の前でその日2回目のプレゼン。決勝ということもあり、1回目よりも熱量が高く、目を見ながら話すなど伝え方が上手になっているように感じました。
 「チョコレートのどこがいいかというと、ビター、ミルク、ホワイトがあって甘さを選ぶことができるところです。そして、イベントの日にはチョコレート菓子を自分で作ります。難しいけれど、完成したときには達成感を味わうことができます。作ったものを家族で食べる時間が好きです」と台本を用意して好きなところを詳細に発表したHくん。
 Kくんは、印刷して持ってきたイラストをホワイトボードに貼ってから発表を始めます。「このゲームはこの人が1人で作ったゲームです。それだけでとてもすごいです! 25年以上経ってもたくさんの人から愛されているゲームは本当にすごいと僕は思います。そして何よりもレトロだけど新しさがある絵に魅力を感じます」と好きなところを語りつくしました。好きなことについて話す2人はいつも以上にイキイキとして輝いていました。
 その発表だけでは終わらず、授業後に「いちばん好きなチョコレートは何?」「そのなかでもおすすめのゲームは?」とまわりの子から質問をされている2人。それだけ聞き手は魅力を感じたのでしょう。きっと生活のなかでそのチョコレートやゲームやチョコレートを見つけたとき、発表者2人のことが頭に浮かぶはずです。

 好きなものがあるということ、そしてそのことについて語れるということはその人自身の最大の強みであり、魅力となります。なぜなら語るためにはその物事についてよく知り、言語化する必要があるからです。「良さを伝えたい」「魅力を知ってもらいたい」その一心で好きなものについて話をしている瞬間、その人は輝きを放っています。だからこそ、その人のまわりに人が集まってくるのでしょう。
 そんな魅力あふれる大人でいるために、私はこれからも好きを追求しながら子どもたちに伝えていきます。子どもたちにも何か好きなものに没頭できる、そんな魅力あふれる人生を送ってもらいたいものです。

花まる学習会 西山由乃(2023年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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