人から何度も聞くより、一度実際に自分の目で見るほうが確かであり、よくわかる。
先日、休みを利用して向かった京都でさまざまな観光スポットをまわりました。金閣寺や清水寺などの有名どころで一息つきながら趣を感じ、ゆっくりとした時の流れを楽しんでいたのですが、この旅行で最も印象に残っているのは別の場所でした。それは、初めて訪れた三十三間堂。社会の教科書に載っていた写真を見た記憶がわずかばかり残っていたのですが、いざ到着すると想像以上の迫力に圧倒され感動を覚えました。心震えるような経験。実際に見たものが与えてくれる衝撃の大きさ。大満足の休暇となりました。
子どもたちが何かを創作したときに「〇〇みたいな形!」と比喩表現を用いることがよくあります。「この紫色、ブドウみたい!」「(ギザギザしている線を見ながら)雷みたいだね! ゴロゴロー!」という具合に。経験値から引き出される素敵な表現の数々は、子どもたちの記憶に色濃く残っているエピソードとともに呼び起こされるものなのでしょう。どれだけ多くの経験をすることができるか。その経験を積める場を用意することができるか。子どもたちが新たな経験をした瞬間に、そこに適切な言葉を添えてあげることができるか。授業をするうえでも大事にしていきたいなと強く思う部分です。
実際に見て、体感して、心に残る経験を積んでいくことで子どもたちはグングンと成長していきます。その実体験が、「聞いたことある!」という状態だった知識と結びついたときの晴れやかな表情がたくさん見られることは、花まる学習会の教室長をしていて得られる喜びの一つです。
先日の授業で、天気にまつわる言葉からその様子をイメージするゲームをして遊ぶ時間をとりました。
「“狐の嫁入り”とはどんな天気でしょう?」
「あ! 知ってるよ! お天気雨でしょ! この前お母さんが教えてくれたんだ!」
「“朧月夜”はどんな天気でしょう?」
「月と夜があるから、きっとお月様が出てるんだよね…うーん」
子どもたちが過ごしてきたこれまでの人生で、経験し、そこに言葉が添えられて知識としても積みあがっているものは強固な記憶となっていくことを感じた瞬間でした。
その日の授業後、空を見上げるときれいな“朧月”が。「先生! 朧月夜だね!」と得意げな表情で口にしながら帰っていく子どもたちでした。
花まる学習会 秦野達也(2023年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。