【花まるコラム】『「プレゼント」のリレー』勝野菜生

【花まるコラム】『「プレゼント」のリレー』勝野菜生

 子どもたちとかかわるなかで、彼らから“プレゼント”をもらうことがあります。

  年明け、私はアノネミュージックアカデミーの『3日間 実技強化コース』にて、チェルニーという作曲家について授業をしました。エキスパートコース(高学年や中学生向けの集団音楽教室)でも作曲家についての授業をしていますが、実技強化コースには低学年の子どもたちも参加していました。低学年の子でも楽しみながら、作曲家のドラマや曲のおもしろさを知ることができるように準備していました。
 ミュージックアカデミーが終わり、1週間ほど経ったある日のことです。このコースに参加していた1年生のAくんが、私のレッスン室にやってきました。「〇〇先生、これ!」と私に手渡してくれたのは、年賀状でした。裏には手書きのメッセージが。

チェルニーの授業、楽しかったです。また教えてください。

彼がこのようにメッセージをしたため、伝えてくれたことに大変感動しました。

 また、ある日のレッスンでのことです。2年生のBくんに「先生、その色、似合うね!」と声をかけられました。Bくんは、私がその日に着ていた緑色の洋服を見て、そう言ってくれたのでした。私はそのBくんの一言をきっかけに「確かに緑色、しっくりきているかも?」と気づき、それ以降、服を選ぶ際は真っ先に緑色を探すようになりました。Bくんの一言で「私に似合う(らしい)!」と自信を持って身に纏える色ができました。

 私の髪留めを見て「先生、それいいね!かわいい!」と声をかけてくれる子、私の足に絡みついて「先生、大好き〜!」と毎週のように伝えてくれる子…。いつも私は、子どもたちからたくさんの“プレゼント”をもらっています。こうやって、感謝や気づきをもらえることは、とても嬉しいことです。「この仕事をしていてよかった。頑張ろう」と思えますし、幸せな気持ちになります。

 こんなふうに“プレゼント”をもらうたびに考えることが2つあります。
  1つ目は、誰かへの気持ちを、その人に伝える大切さです。自分が抱いている思いを素直に人に伝えることは、勇気のいることだと私は思います。「ありがとう」という感謝の気持ちも、「あなたのそれ、いいね!」という気づきも、言われていやな気持ちになる人は決していないはずです。しかし、思っていても口に出さずに終わってしまうこともあるのではないでしょうか。先述の子どもたちは自分の気持ちを素直に伝えることができます。それは、とても素敵だなと思いましたし、見習わなくては、と尊敬もしています。思っていることを素直に伝えることで人に幸せを与えられるなんて、どんなに素晴らしいことでしょうか。

 2つ目は、きっと子どもたちの周りに、子どもたちに対して“プレゼント”を渡している人がいるのだろう、ということです。保護者のみなさまをはじめ、ほかのご家族のみなさま、学校の先生、習い事の先生、友達。周囲のさまざまな人から“プレゼント”をもらい、心が十分に満たされている。だから、子どもたちも自然と“プレゼント”を渡すことができるのだと思います。

 ドイツの社会心理学者、エーリッヒ・フロムは、自身の著書『愛するということ』にて「愛とは愛を生むもの」と書いています。子どもたちからもらった“プレゼント”を、今度は私から、子どもたちやまわりの方たちへ。そして、さらにその人たちが周囲の人に“プレゼント”を渡す…。そんな、愛を生む素敵なリレーに参加し続けることができるよう、子どもたちを見習い、自分の気持ちを素直に(そして、気持ちよく受け取れるように配慮しつつ…)伝えていこうと思います。

 

アノネ音楽教室 勝野菜生(2022年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

花まるコラムカテゴリの最新記事