私は、子どもたちの“好き”や“得意”は、かけがえのないものだと思っています。自分の持っている力を愛でて、尊重し、それを武器に自信を持って社会へ飛び出して、幸せに輝いてほしいと願っています。
人の長所と短所は、表裏一体です。
以前、学習障がいをもった男の子と出会いました。小学5年生ですが、九九や漢字もなかなか難しく、時計も読めないところからのスタートでした。けれどもその子は、驚くほどに、会話の能力がずば抜けていました。大人でも難解だと感じる曖昧な表現や隠喩もごく当たり前に理解し、多彩な相槌を持ち、ボケや“スカシ”まで使いこなします。彼のコミュニケーション能力は、明らかに大人以上でした。
小学校でのさまざまな人間関係のなかで生き抜いていくために、コミュニケーションで補ってきたのだろうと思います。
以前、同僚に、色盲の英語科の先生がいました。
一度も留学をしたことがないはずなのに、ネイティブと変わらない発音なのです。耳が非常に良く、アメリカ式とイギリス式の発音の違いなどもすべて独学で学んだそうで、とてもわかりやすくおもしろく説明してくれます。生徒からの信頼も厚い先生でした。
それぞれ、自分の苦手なところを補ってきたことで、それがいまではかけがえのない魅力になっています。
長所とみるか、短所とみるか。
それは、周りの大人や環境にかかっていると思います。そして、長所を見つけて引き出すことが、我々大人の使命であると思い、日々、私も子どもたちと向き合うなかで大切にしていることです。
実は、“得意なこと”というのも、自分にとっては当たり前になり気がつきにくいものだと思います。だからこそ、いいなと感じたらその場で伝えるようにしています。
「絵の色の使い方が素敵だね!」
「いまの一言、思いやりがあっていいね!」
たいていの場合は、キョトンとした表情を浮かべますが、本当に素敵なところばかりです。
将来彼らが生き方に迷ったとき、その言葉が一つのお守りになればいいなと思っています。
生きていくうえで一番必要な力は、何か一つ、世の中から必要とされる力だと思います。必要とされる場所で、必要とされるだけの力を発揮できれば、幸せに生きていくことができます。
私の“好きで得意”なことは、子どもたちと同じ目線で向き合うことだと感じ、現在に至ります。ともに悩み、喜びも悲しみも分かちあえる存在になっていきたいです。
子どもたちは、ふとした瞬間の何気ない言葉も鮮明に憶えているものです。言葉に愛を込めて、大切なかけがえのない時間を過ごしてまいります。
これからどうぞよろしくお願いいたします。
花まる学習会 平山真康(2021年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。