【花まるコラム】『M、お姉さんになりました!』根本沙織

【花まるコラム】『M、お姉さんになりました!』根本沙織

 先日の小学生クラスで、HIT(Hanamaru Intelligence Test)という花まる学習会で年に3回行うテストの第1回を実施しました。1年生の子どもたちのなかには、初めてテストを受けるという子もいたのではないかと思います。心なしか緊張している子どもたちの様子が見られました。授業が始まる前に、準備として4枚のテストに名前を書きます。1年生にとっては「4枚の用紙に名前を書く」ということも初めてです。手が止まっている1年生の子の隣の席に、2年生の女の子Mがやってきました。最初はスローペースで準備をしていたMに「M、隣の子が1年生で、今日初めてHITを受けるんだ。どこに名前を書けばいいか、困っていたら教えてあげてくれるかな?」と声をかけると、Mの表情がぱあっと明るくなりました。その後、Mはお姉さんに大変身。「ここに日付と、教室の名前と、自分の名前を書くんだよ!」と、自分自身のテストに名前を書くことも忘れ、隣の1年生のために一生懸命教えていました。「Mも最初に自分の名前を書こうか!」というこちらからの声も聞こえないほど1年生に寄り添っている姿を見て、講師一同、とても温かな気持ちになりました。

 HITの日こそ、困っている1年生に手を差し伸べるお姉さんらしい一面が見られたMですが、普段はマイペースで、どちらかというと今回の1年生の子のように「教えてもらうこと」のほうが多かったように感じます。だからこそ、普段見られないMの一面を見てとても驚きました。
 年中から花まる学習会に通っているMは、楽しいと感じたことに対してとことん熱中することができるという長所をもっています。「もう時間だよ!」と伝えても「もっとやりたい!」と時間を気にせず挑戦し続ける姿勢には、目を見張るものがありました。小学生になってからも花まるの授業を楽しんでいたMでしたが「楽しいことにはとことん熱中!」という面は変わらず。1年生の頃は、手が止まると顔を伏せてしまうこともありましたが、2年生になり、いままで見られなかった一面が少しずつ見られるようになりました。Mの気持ちを動かしたものは、いったい何だったのでしょうか。
 Mが1年生の頃の国語大会や算数大会では、すぐに答えがわからなくても、2・3年生のサポートがあり、諦めることなく大会を楽しんでいました。しかし、今度は自分よりも経験のない1年生が隣にいて、どうしたらよいか悩んでいます。その様子を見たときに「私が助けないと!」と、Mの中で「今度は自分が助ける番!」という気持ちが芽生えたのでしょう。

 花まる学習会の小学生クラスでは、異学年交流の場が多くあります。1年生が勇気をもって発表すると2、3年生が拍手を送り、2、3年生の発表する姿を見て1年生が真似をして伝え方を工夫する。これは高学年クラスでも同じです。子どもは「自分がされて嬉しかったことを真似する生き物」と言いますが、Mがまさにその例でした。私たちも気づかないうちに、こんなにも心が成長していたのだと実感した瞬間でした。
 学習面はもちろん、子どもたちは「心」の面でも常に成長しています。人に優しくできること、「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えられること、自分が悪かったときには「ごめんなさい」と言えること、相手の気持ちを考えること。どれもこれから大人になるうえでとても大切なことです。最初からできなくても、たくさんの仲間や大人と出会うなかでときには失敗し、ときには喜びを感じて、子どもたちの「心」は大きく成長していくのでしょう。

 Mに名前を書く場所を教えてもらった1年生の子が「ありがとう」と言ったときのMの嬉しそうな表情から「やってよかった」という想いが伝わってきました。きっとこれからも困っている仲間がいたら、Mは手を差し伸べてくれるでしょう、そして今回Mに名前を書く場所を教えてもらった1年生は、来年同じことをするでしょう。

 花まる学習会が子どもたちにとって「成功体験」を積む場になるように、「学習面」と「心の成長」の場になるように、これからもサポートしてまいります。

花まる学習会 根本沙織(2021年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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