【花まるリビング⑬】『YouTubeの価値観、読書の価値観』勝谷里美 2022年5月

【花まるリビング⑬】『YouTubeの価値観、読書の価値観』勝谷里美 2022年5月

 先日、2年生の長女が寝言で、「それ、どうでもよくない?」(語尾があがる感じで)と言っていて思わず吹き出してしまいました。
 ただ一方で、反抗的な態度もまだ「かわいいなぁ」の範疇だった幼児期を卒業し、いよいよ母とのバトルが激しくなるであろう高学年女子に片足をつっこみ始めていることに一抹の不安もよぎりました。早く大きくなってほしい気持ちと、もう少しゆっくり成長してほしい気持ちと、半々なのが正直なところです。

 長女は小学生になり、ここ一年で急に大人びた口調になってきました。周囲の影響ももちろんあると思いますが、好きで見ているYouTubeの影響も大きいだろうなぁと思います。
 YouTubeの視聴については、教育的知見からは賛否両論あるかもしれません。わが家では、この時代だからうまく付き合っていってほしいもの、ととらえてはいるのですが…付き合い方が難しいと感じるのは、【子どもの価値観にまつわること】への影響の部分です。

 たとえば、わが家の事例ですが、長女は、YouTubeの視聴時間が長くなるにつれて「え、普通は〇〇でしょ」「〇〇するのって、バカすぎるよね」といった、聞いていてドキリとするような言葉が増えました。その都度、「どうしてそう思ったの?」「普通っていうのは人それぞれでね…」「こう考える人もいれば、そうは考えない人もいる」といった話をするのですが、返ってくるのは、「でも、YouTubeでは、こう言っていたよ」と。

 大人びてきたとはいえ、まだ子ども。真っ白な部分が残っているので、その下地に、一つの価値観が植えつけられて固まってしまい、その都度、親の言葉で修正をかけていく、偏った価値観に固まってしまわないように働きかけていくのがけっこう大変だな、と思わされます。

 親の言葉も一つの価値観なので、最終的には子ども自身が自分で考えて、哲学を持ち、これはこう、と判断しながら生き抜くことが一番いいとは思うのですが、そこにたどり着くまでに、何度となくこういった「親子の本気の対話」「大人が手を抜けない対話」をしていかなくてはいけないのでしょう。

 子ども自身が、哲学を形成していくのに役立つ一つのコンテンツに、読書があると思います。漫画でもアニメでも映画でも、他にも素敵なものはたくさんあるのですが、読書は幼いときから触れやすいコンテンツではあるので、YouTubeの価値観(それもひとくくりにできず、多種多様ではあると思いますが…)に引っ張られすぎないためにも、身の回りに本がある環境は意識したいと思います。そして、日々の読書で触れた【あのとき読んだ、あの本の、あのセリフ】や、【忘れられない素敵な場面】が、子どもたちの価値観の軸の部分に組み込まれていることを、親の勝手かもしれませんが、心から願います。

花まる学習会 勝谷里美


🌸著者|勝谷 里美

勝谷里美 花まる学習会の教室長を担当しながら、花まる学習会や公立小学校向けの教材開発や、書籍出版に携わる。現在は、2児の母として子育てに奮闘中。著書に『東大脳ドリルこくご伝える力編』『東大脳ドリルかんじ初級』『東大脳ドリルさんすう初級』(学研プラス)ほか

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