【花まるリビング㊸】『アンオフィシャルな場所だからこそ!』勝谷里美 2025年2月

【花まるリビング㊸】『アンオフィシャルな場所だからこそ!』勝谷里美 2025年2月

 わが家では、約3年前から年始に「カード&ボードゲーム大会」を開催しています。家にあるカードゲームやボードゲームを使い、大人も子どもも本気で取り組むひとときです。
 初めてこの大会をおこなったとき、長男はまだ年長。負けると悔しくなり、「もうやらない!」といじけたり、泣いたり、時にはちゃぶ台をひっくり返すこともありました。しかし、今年は様子が違いました。負けて悔しがることはあっても、ゲームを中断させることはなくなったのです。同じことを続けていくなかで、子どもの成長を感じる良い機会にもなっています。

 今年の大会では、新たな変化として【子どもチームの結託】が見られました。
 私(母)と長女(小4)、長男(小2)の3人で「アルゴ」というゲームをしたときのことです。
 アルゴとは、対戦相手の伏せられたカードの数字を推理して当てるゲームで、論理的思考力を鍛えることができます。(花まるグループでは対面とオンラインで「花まるアルゴ教室」も開講中です。)
 最初は普通にゲームを進めていましたが、途中で子どもたちが「自分たちの持っているカードを照らし合わせれば、母のカードがわかるのでは?」と気づきました。そして、直接カードを見せ合うわけではないものの、ルールギリギリの範囲で手札の情報をすり合わせ、私を攻めてくる展開に! 「それじゃあ勝てないよ~」と悔しがりつつも、そんな子どもたちの姿に成長を感じ、母としては少し感慨深くなりました。

 家族でカードゲームやボードゲームを楽しむことは、思考力やコミュニケーション能力を育む大切な時間です。花まるグループでも、こうした活動を推奨しています。ただし、「○○を伸ばそう」という大人の意図が見えすぎると、子どもたちのやる気は一気に失われてしまうので、大人も子どもも本気で遊ぶことが一番!
 また、今年観察していて気づいたのは、家族という「アンオフィシャル」な場所でしかできない経験もまた貴重だな、という点です。

 たとえば、今回の「アルゴ」で見られた【子どもチームの結託】は、公式の場では通用しない手法です。しかし、家族という「アンオフィシャルな場」だからこそ許された、完全に不正ではないが、ちょっとズル。ちょっとズルをしながら、相手をふふふと出し抜いていく子どもたちの目のキラキラ加減といったら。頭がフル回転している状態なのが伝わってきます。
 このような遊び心=白黒でははかれないちょっとしたグレーな部分を攻めるといったゆとり幅のような部分も、安心・安全な家族の場だからこそ積める経験といえるでしょう。

 代表の高濱が語る「子どもは外遊びのなかで遊びを進化させていく」という事例があります。

 遊びを基盤ごと変えて、臨機応変に工夫して楽しむことも子どもは得意です。  
 いつもは4人で遊んでいるのに今日は5人になったら、さっとルールを変えて楽しく遊べます。遊んでいる間にも、子どもは楽しいことしかしませんから、つまらなくなってきたらすぐにルールを変えてしまいます。そのうち元のルールはどこかへいってしまって、自分たちだけのゲームをしていることもあります。ゲームそのものを創ってしまえる発想力や柔軟性、判断力。これもイメージ力を支える能力です。 
――高濱 正伸 著『小3までに育てたい算数脳』 (エッセンシャル出版社)イメージ力は外遊びでこそ伸びる の項より  

 この【遊びを基盤ごと変える】というのが、外遊びで子ども同士のなかだけではなく、家族でカードゲームやボードゲームをしているときにも、よく起こります。

 家族だと、4人で遊ぶボードゲームなのに3人しかいない、一人は5歳年下でルールもわかっていないなんて、イレギュラーだらけ。そんな状況のなかで「どうすればみんなが楽しめるか」を考える必要が出てくる。結局、アンオフィシャルなルールだらけのなかでゲームを進めることになりますが、それもまた経験! 発想力、柔軟性をフル活用して楽しんでいました。

 あまりにもルールを逸脱するようだったら、場を引き締めて。でも、躍動している子どもの状態は見逃さずに、尊重して。そんなふうに、アンオフィシャルな場所=家族でのカードゲーム、ボードゲームの時間を楽しんでいけたらいいな、と思った2025年の始まりでした。

花まる学習会 勝谷里美


🌸著者|勝谷 里美

勝谷里美 花まる学習会の教室長を担当しながら、花まる学習会や公立小学校向けの教材開発や、書籍出版に携わる。現在は、3児の母として子育てに奮闘中。著書に『東大脳ドリルこくご伝える力編』『東大脳ドリルかんじ初級』『東大脳ドリルさんすう初級』(学研プラス)ほか

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