【花まるリビング⑫】『子育ての“大変”とどう向き合うか』勝谷里美 2022年4月

【花まるリビング⑫】『子育ての“大変”とどう向き合うか』勝谷里美 2022年4月

 4月、環境や生活リズムが変わるタイミングで、何かと慌ただしい時期です。私は、スマホのカレンダーに、毎年3月最終週の日曜日に反映されるように「書類・名前書き等」という予定を三時間分入れています。子ども二人が初めて保育園で進級する年に(準備にこんなに時間がかかるんだ…!)と驚いたくせに、翌年にはすっかり忘れて、締切前夜にひいひい言った苦い経験があるからです。日々のめまぐるしい子育てでは「忘れていくこと」が本当に多く、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ということわざが度々頭をよぎります。

 年少のときの面談で先生から「友達がいなくて、ひとりで遊んでいる」と心配された長女。「大丈夫かなぁ」とやきもきしたものですが、最近は「友達を自分の部屋に招きたくてしかたない子」に変化して、私がだめだという日も友達を連れてくることへの対応に悩む日々です。
 こうやって書いてみると「成長したなぁ」と振り返ることもできますが、その時々は宙ぶらりんな悩みがたくさんあり、解決したのかしていないのかわからないまま、新しい悩みが増えて、古いものは忘れていく感覚があります。それが、“子育て大変”がずっと続いていく日々の感覚の根っこにあるのかもしれません。子育てはいつか終わりがくる、一緒に過ごせるのはいまだけ、いまがいちばんかわいい時期…それも本当にそうなのですが、でもやっぱり、“いま、大変”と思ってしまいます。

 子育ての“大変”。(どうして私ばっかりこんなに大変なんだろう)と当たり散らしたくなる日もあれば、(私よりもっと大変な人はたくさんいるのに、どうして、私はうまくできないんだろう)と自己嫌悪に陥る日もあります。

 花まるの計算教材「サボテン」は、「他人ではなく、自分との戦い」。子育ての基準も、他の家庭ではなく、自分の家庭においていいはずです。自分が“大変”と思ったら、それはもう“大変”。ワンオペであろうがなかろうが、仕事をしていようがしていまいが、子どもの数が多かろうが少なかろうが、関係なく、他でもない自分が“いま、私、大変”と思ったら、それがすべて。
 大変と感じる自分の気持ちに蓋をしてしまうと、自分がないがしろにされたまま、積もりに積もって、いつか爆発してしまうかもしれません(実際、自分の夕飯を二時間後回しにして空腹の限界が来ていた昨晩、怒り大爆発の寝かしつけをしてしまい、反省の気持ちをもとに、これを書いています…)。

 その“大変さ”を、どう解決したらいいのか。答えは見つからないですが、一つできることとして「まずは書き留める」。自分がどういうときに“大変だ”と感じるのか。自分の心はどう動いたのか。書くこと自体に浄化作用がありますし、私にとっては、「書く」=「自分のためだけに使う時間」=「自分を大切にしてあげられている」時間です。
 書き留めたものを時々振り返ると、“大変”に終わりはないけれど、過去の一日を何とか終えて、その続きの日である今日を迎えられていることに気づきます。

 昨日より、確かに一歩は進んでいるーーそのことで、自分を少しほめてあげることができそうです。何気ないけれどとても貴重な日常を、今日も迎えられたことへの感謝も胸に、ゆっくり歩いていく一年にできたらと思っています。

 この連載では、昨年に引き続き「マニュアル通りにいかない子育て」を考えながら、日々の子育てに寄り添えるような本を紹介していけたらと思っています。一年間よろしくお願いいたします。

花まる学習会 勝谷里美


🌸著者|勝谷 里美

勝谷里美 花まる学習会の教室長を担当しながら、花まる学習会や公立小学校向けの教材開発や、書籍出版に携わる。現在は、2児の母として子育てに奮闘中。著書に『東大脳ドリルこくご伝える力編』『東大脳ドリルかんじ初級』『東大脳ドリルさんすう初級』(学研プラス)ほか

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