【花まるリビング⑪】『育児書の、“一歩先”がわからない』勝谷里美 2022年3月

【花まるリビング⑪】『育児書の、“一歩先”がわからない』勝谷里美 2022年3月

 花まるグループでは、YouTube「花まる子育てカレッジ」にて、「講演会寄席」という企画で、30分講演を配信中です。いま乳児の世話で家にこもりきりなので、家事をしながら、寝かしつけながら、耳だけでも花まるモードにしようと思い、ときどき聴いています。

 スクールFC講師仁木耕平の回は「子どもの語彙力を伸ばす!今日から家庭でできる会話の技」についてでした。(うちは”ビジネストーク”ばかりで、”おまけの話”ができていないかも)と反省しきり。言い方を変えてみようかな?この技をとりいれようかな?という気づきがある新鮮な時間でした。

 高濱も”言葉に厳しくあれ”というメッセージを発信することが多く、私も子育てにおいて”言葉”は意識してきたつもりです。が、マニュアル通りにしようとしても全然思い通りの反応が返ってこない!!ということも多々あります。

 【「やばい」という言葉をそのままにしない】と聞き、5才男子が「それ、やばい!」と使っていたので、(これはチャンス!)と思い、「ねぇ、やばいってどういうこと?すごい?それともピンチ?」と尋ねたところ、横で聞いていた7才の長女が「『やばい』はやばいだよ。わかんないの?遅れてるねぇ」と口をはさむ。「『やばい』はさぁ、すごい!ときにも、まずいときにもつかうから、もっと違う言葉にしないと相手には伝わらない~云々~」といくら言ったところで、長女「『やばい』は『やばい』だよ。みんなそれで通じてるよ」と…。

 マニュアルにはこんな個別ケースの対応は書いていないので(さぁその次の手はどうしよう)というのが悩みどころです。そこからは各家庭の工夫のしどころともいえるかもしれません。

 子育てのマニュアル、育児書に書いてあることのその”一歩先がわからない”というのは、算数の問題で「補助線をここに引く」と解説に書いてあるがその”補助線の引き方がわからない”という悩みとよく似ているなぁと思います(補助線の引き方は、高濱がよく取り上げる事例です)。”一歩先のあり方”は、きっと【親×子ども×家庭×学校・園×…】 といろいろな要因がからみあって、無数に存在するからこそ、親自身の感性を頼りに、自分で選び取っていかなくてはいけないものなのでしょう。

 4月にこの連載を書くにあたり「マニュアル通りにいかない子育て」をテーマに掲げました。一年経ってもやっぱり、うまくいったこと、いかなかったこと、どっこいどっこいだなぁという感覚のまま、日々の子育てが進んでいきます。

 以前、朝のニュースで、ある男性俳優の紹介をするときにアナウンサーが「Aさんは“絶賛子育て中”で…」とコメントをしていました。“絶賛〇〇中”という言葉の意味は「絶大な賛美」「高い評価を受けて〇〇している最中。また本来の「ほめる」という意味が抜け落ち、〇〇している最中という意味で使われることもある」とのこと。朝の慌ただしい時間(=母のイライラが募る時間…)をやっと終えたところだった私は、「子育てでそんなにほめられることないし」「絶賛〇〇中なんて軽い言葉でくくられるほど、子育てって楽しいものかなぁ」と、噛みつきたい気分になりました。そんな日も、あります。

 自分がしたこと、しなかったこと、それぞれどのような結果になるのかはわからない。子どもにどう影響するかも、予測不可能なことが多いのだから、どうせなら自分が楽なほうを、楽しいほうを選択していきたいと思いますし、自分が笑っていると、子どもたちも家族も楽しそうだというのは、決して揺るがない部分だと、私は思います。

 同じく子育て中のみなさまの笑顔に、花まるグループのスタッフのさまざまな想いや、技、教え方などが少しでも役立つのであれば、幸いです。

花まる学習会 勝谷里美


🌸著者|勝谷 里美

勝谷里美 花まる学習会の教室長を担当しながら、花まる学習会や公立小学校向けの教材開発や、書籍出版に携わる。現在は、2児の母として子育てに奮闘中。著書に『東大脳ドリルこくご伝える力編』『東大脳ドリルかんじ初級』『東大脳ドリルさんすう初級』(学研プラス)ほか

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