【花まるリビング⑨】『自由でやわらかな判断』勝谷里美 2022年1月

【花まるリビング⑨】『自由でやわらかな判断』勝谷里美 2022年1月

 私事ですが、11月に第三子となる女の子を出産しました。下の子と五歳差ということもあり、久しぶりの新生児の登場に毎日・毎時間・毎分あたふたしていますが、長女、長男、それぞれが小さかった頃のことを思い出し、懐かしくもなる日々です。
 そんな懐かしさとともに、三人目の出産を経て気づいたことがあります。
 仕事の関係や、私の里帰り出産などいろいろな事情があり、意図したわけではないのですが、きょうだい三人とも、異なる県、異なる病院での出産でした。それにより「病院によって、人によって、『この場合はこうしたらいいよ』というのはいろいろあって、唯一の正解はないんだなぁ」ということをまざまざと感じました。
 たとえば、一人目は総合病院、自然分娩だったのですが、「母乳育児支援」のスローガンを強めに掲げる病院だったようで、いま思うと“割とスパルタ”な母乳指導でした。
 二人目は、個人病院、帝王切開で出産。そこも母乳育児を推奨していましたが、「困ったらミルクを使ってもよい」というスタンス。ただ、一人目で「母乳母乳!」と言われていたこともあった私は、「頑張って母乳をあげたほうがいいんだよなぁ」とミルクは使わずに進めていたら、助産師さんから「あまり母乳を飲めていないのに、なんでミルクを使ってないの!」と強めに言われて、「あれ…?一人目のときとちがう…」と戸惑ったのを覚えています。
 そして三人目は、また別の総合病院。そこは「母乳はもちろん大切。ただ、一番大事なのは、お母さんが無理をしないこと。休むこと。辛かったら上手にミルクを使ってくださいね」というスタンス。ここまできて、私もようやく、「あー、なるほど、正解はない!そのときの自分と子どもの状態を見極めて、自分がいいと思うことを選んでいけばいいのかな」という自分なりの答えにたどりつきました。
 いま振り返ってみると、二人目は一人目よりも小さめに産まれたこともあり「母乳にこだわるのではなく、まずは栄養を確実にとることが大事!」という助産師さんの判断だったのかもしれないな、とも思うのですが、当時はそんな意図もわからず、ただただ「言っていることがみんなちがう…何が正しいかわからない」ということがショックでした(産後で落ち込みやすい精神状態も影響していたと思います)。
 子育てにおいて「言われたこと(助言やアドバイス)が矛盾している」というストレスは、多かれ少なかれ経験したことがある方が多いのではないかと思います。私は少し前にも「コロナで不要不急の外出は控えてください」という通知と「子どもにスマホやテレビを見させ過ぎないように。外遊びを推奨します」というおたよりが同時に来たときに、(いったいどうしろというのだろう…)と、途方にくれました。
 どちらも正論かもしれません。ただ、どちらも同時進行しようとすると、すごく難しい。何に従ったらいいの?育児書にも、SNSにも、きらきら素敵に見える正論がたくさんあふれている…。
 ここでもきっと結局は、家庭の軸となる部分を鑑みて「じゃあ、うちはどうするのか」という判断になるのでしょう。
 その「家庭(自分)の判断」も一度決めたからそれで終わりというわけでもなく、目の前の子どもたちの状況、様子を見て、その時々で変わるものなのかもしれないなーと思います。子どもも変わるし、親も変わる。絶対にぶれない軸を一つだけもっておけば(たとえば毎日元気に楽しく生きる、といった抽象的な目標で)、あとはその時々でやわらかく、自由に判断していければと思います。
 ちなみに、スパルタな母乳指導のもとで育った7歳の長女は、先日「赤ちゃん、母乳ばっかりだと飽きちゃうから、クリスマスは特別に、液体ミルクをあげるといいと思う!」と張り切って提案してきました。子どもが大きくなるのはあっという間、というのは本当ですね。貴重な日々です。

花まる学習会 勝谷里美


🌸著者|勝谷 里美

勝谷里美 花まる学習会の教室長を担当しながら、花まる学習会や公立小学校向けの教材開発や、書籍出版に携わる。現在は、2児の母として子育てに奮闘中。著書に『東大脳ドリルこくご伝える力編』『東大脳ドリルかんじ初級』『東大脳ドリルさんすう初級』(学研プラス)ほか

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