2021年の大晦日は、久しぶりに紅白歌合戦を見ることができました。一昨年までは、じっとしていられない子どもたちに付き合ってバタバタ遊んでいたのですが、長女が7歳になり、「歌番組を楽しむ」モードになっていたからです。
また5歳の長男も、流れてくる曲の歌詞を自分なりに楽しみ始め、「♪猫になったよ~ぼくは」と歌って、姉から「ぼくが猫になったらニャーニャーしか歌えないじゃん!」と突っ込まれたり。「♪ギリギリで生きていたい」という歌詞を聞き、「それって、おしっことかギリギリまで我慢しちゃうのかなぁ」と言って笑われたり(いつも、母から「トイレをギリギリまで我慢しないでね」と小言を言われているから…)。
そんな和やかな年越しとなったのは、私自身も産休中で、いつもより心にゆとりがあったことも影響しているかもしれません。生活のリズムがこれまでとは変わり、少し立ち止まってみて、暮らしの「効率化」と「余白」について、考える機会が増えました。
長女がサボテンの計算をやりながら左手で手遊び(スライムをぐにゃぐにゃ握る)をしていたので注意したのですが、「ママだって、一度にいろいろやってるじゃん」との返し。はい、そうです、確かに…。「ごはんを食べながら、気になるドラマを流しつつ、スマホを使いネットスーパーで買い物をする」など、効率化を求めすぎて自分でもよくわからなくなっていることが、これまでありました。
働いている・いないにかかわらず、子育てをしていると「いかに効率的にするか」を考える機会が多いのではないでしょうか。家族との時間も、自分の時間もほしい。やらなきゃいけないことは最短の時間で終わらせたい!といろいろ試し、うまくいくと嬉しいものです。これからも「効率化」は目指したいのですが、一方で、「効率化」だけだと見落としてしまうことにも気をつけておこうと思います。
たとえば、「味噌汁」。夜ごはんに何品も作る余裕はないので、味噌汁に何種類かの野菜を入れることにしていました。一品で栄養も取れて効率的!のはずが、子どもたちは「味噌汁きらい」と言ってあまり食べずにイライラが続く日々。ある日、ふと、「エノキだけの味噌汁」にしたらなぜかばくばく食べてくれて、拍子抜け。「これが効率的で一番」と思うあまり、視野が狭くなっていたかもなぁ、と反省しました。
たとえば、「お風呂のおもちゃ」。「お風呂入るよ」「いやだ!」の毎日。時間を効率的に使っていかないと、寝る時間がどんどん遅くなるからと、「5分でぱぱっと入るよ」「TV見る前に入っちゃおう」などと声をかけるもうまくいかない日々。おもちゃで釣ろうとして検索すると「お風呂の手作りおもちゃ」でペットボトルのウォータースライダーが出てきて(こういうの好きそうだなぁ)と思いつつも、ビニールテープや吸盤など材料を買うところからかぁ…時間があるときじゃないとできないなぁ、とずっと後回しにしていました。
ある日、ふと、花まるの年中授業の「パズル」を思い出し、【白い食品トレイに、油性ペンでぐるぐる線を書き、6分割に切って】「今日は、お風呂でこの迷路パズルするよ」と渡してみたところ、「やるー!」と、ノリノリでお風呂に直行。拍子抜け。ほかにも「トレイの上に交互に何か乗せていってひっくり返した方が負けゲーム」や、「沈んであるビー玉を早く見つけた方が勝ちゲーム」など…。凝ったおもちゃを作れなくても、アイデアと遊び心と渡し方次第で、楽しいお風呂時間を演出できました。
これらの「ふと、思いつく」時間。暮らしの中で、軽めのチャレンジをする余白がないとなかなか生まれてこない時間のように感じます。
花まる学習会の代表の高濱は、算数の力をつけるキーワードとして、「見える力」「詰める力」と、あと一つ「あそぶ力」というものをあげています。
ーー自分を俯瞰する位置から眺め、フレキシブルに道筋を変更できる能力。イメージが見えて、詰めている中で、「あれ?これだと周り道かも」と感じた瞬間にスッと自分のこだわりから離れられる柔軟さーー
この「あそぶ力」という考えは、暮らしの中でも活かせそうです。「効率化」を求めつつも、ときには、「余白」を意識して。暮らしを俯瞰してみて、「あ、ちょっと思いついちゃった」ことを、軽やかに試せるゆとりを大切にしていきたいな、と思った2022年の始まりでした。
花まる学習会 勝谷里美
🌸著者|勝谷 里美
花まる学習会の教室長を担当しながら、花まる学習会や公立小学校向けの教材開発や、書籍出版に携わる。現在は、2児の母として子育てに奮闘中。著書に『東大脳ドリルこくご伝える力編』『東大脳ドリルかんじ初級』『東大脳ドリルさんすう初級』(学研プラス)ほか