今年5歳になった息子は、最近、話しかける際は枕に必ず「パパ見て?」「パパ聞いて?」をつけてきます。ちゃんと自分のほうを見ているか、聞こうとしているかもチェックしていて、見ていないと感じると「パパ見て?」が再び出てきます。
「見てもらえていない」「聞いてもらえていない」と感じさせてしまっているのかなと気になっていたのですが、改めて花まるの現場に出ると、「先生見てー!」「先生聞いてー!」がたくさん飛び交っていることに気づきました。
息子は別に満たされていないわけではなく、「見てほしい」「聞いてほしい」という気持ちがより強くなる時期に入ったということ。花まるの子どもたちも同様です。だからこそ、彼らから「見て」「聞いて」というサインが出てきたら、丁寧に向き合って、見る(聞く)姿勢をとらねばと意識している今日この頃です。
さて、そんな息子が通うこども園では、園の近くにあるスポーツクラブと契約し、そこで体操やスイミングをおこなっています。年中クラスに進級した息子も、春から月2回ペースでスイミングがスタート。それまでお風呂を除き、水のなかに入る機会がほとんどなかったため、スイミングを始めて泳ぐことに興味をもってくれたらと願っていたのですが、彼のスイミングデビューは苦い思い出となりました。
いつも帰宅後に夕食を食べながら一日の出来事や思い出を話すのですが、その日はスイミングについてほとんどコメントしない息子。初めてのことや環境に対してすごく慎重になる子なので、回を重ねれば徐々に慣れてスイミングの話題も増えてくるかなとそのときは楽観していました。
しかし、2日後の夜、息子から「次のスイミングは行きたくない、見ているだけがいい」と切実にお願いをされたと妻から聞きました。何度も念を押すように言ってくるということは、よほどいやなのでしょう。次の日、連絡帳にそのことを書き、園の先生からスイミングのときの息子の様子を教えてもらいました。副担任の先生と妻が電話で話したのですが、そこで聞いた内容が「鼻に水が入っちゃって、それがトラウマになったのかもしれません……」でした。
鼻に水が入ったら痛くて泣くのは当たり前。泣かなくとも、水に慣れていない子どもならパニックになると思います。息子が水に対する恐怖心を抱えたまま過ごしていた数日のことを思うと、やりきれない気持ちになってしまいました。
2週間ぶり2回目のスイミングはどうするのか。決して無理強いはしないと夫婦で決めていたので、最終判断は息子に委ねました。葛藤はいろいろあったと思うのですが、彼が最後にくだした決断は「スイミングに参加せず園に残る」でした。ほかにもそういう子がいたのかもしれませんが、もし息子だけがスイミングに行かなかったなんてことを知ってしまったら心がざわつくと思い、何も聞かないでおきました。知らないほうがいいことだってある。焦らず、少しずつ前進していけばいい。そう自分の心に言い聞かせ、息子を見守りました。
5月と6月のスイミングは体調不良で休んだ日もあったのですが、2回参加することができました。「できるところまででも大丈夫」と園の先生に言ってもらえたことで安心し、休み休み参加したそうです。
ただ、スイミングの週になると数日前から「スイミングに行きたくない、園で待つ」と何度も私たちに言ってきます。少しでも次のスイミングが楽しみになればと思い、家族旅行で屋内プールに行ったり、週末に区民プールに行ったりもしました。
そうして迎えた7月のスイミング。またしても息子の口から出てきた言葉は「スイミングに行かない、園で待つ」でした。この言葉を何度聞いてきたことか。言われるこちらの身にもなってくれよ……と心のなかで思いつつ、妻と2人で励まします。当日になっても「いやだ! 行かない!」と怒り口調で返してくるようにまでなったので、今回はちょっと無理かもなと思っていました。
夕方、息子を迎えに行った妻からLINEが。何と、スイミングに行けたのです。しかも翌朝、息子に聞くと「何回も潜れた!」「潜るのが楽しくなった!」「スイミングはもうへっちゃら!」と自信満々に話してくれ、驚きました。実は、彼をあと押ししたのは産休から復職した現担任のO先生でした。
二年前も担任だったO先生に、息子は大きな信頼を寄せています。これまでの状況を聞いたO先生が「○○くん(息子)がスイミングで頑張っている姿、見たいな」と1対1で話してくれたそうです。「見てほしい」という気持ちがより強いこの時期に信頼を寄せる先生から「見たい」と言われたら、はりきってしまいますよね。
「見たいな」という言葉は、見てほしい子どもからしたらスイッチの入る魔法の言葉なのかもしれません。「(あなたの頑張りを)見たい」と心から伝えることで、子どもは安心してチャレンジできることをこの一件から学びました。「見ているよ」という眼差しをこれからも大切にしていきます。
花まる学習会 鈴木和明