【花まるパパ社員のわが家の自由研究⑨】『ハマグリで、逆転ホームラン』臼杵允彦 2025年1月

【花まるパパ社員のわが家の自由研究⑨】『ハマグリで、逆転ホームラン』臼杵允彦 2025年1月

 ある日、事件は起こりました。あれだけ「使っちゃダメだよ」と念押ししていたにもかかわらず、長男K(小4)がSuicaに入っていた交通費用の二千円で、ポケモンカードを大量に買ってしまったのです。叱られるとわかっていたのでしょう。私が帰宅するや否や、「ごめんなさい」とうつむく息子。コンビニでポケカを買う友達を見て「僕も欲しい!」という衝動に駆られる気持ちはわかります。しかし、お金は大切なもの。使っていいお金とそうでないものがある。それをいま、ちゃんと伝えなければならない。そう思い、心を鬼にしました。

「Suicaのお金って、何のために使うんだっけ?」
「電車に乗るとき」
「ポケカ、買っていいんだっけ?」
「だめ」
「でも、買っちゃったね。どうする?」
「……」
「Suicaのお金って、誰のお金?」
「パパのお金」
「そうだよね。Kが電車に乗るときに必要なお金だから、返してほしいんだけど……」
「うん。返す」
「どうやって?」
「……」
「ポケカって売れるの知ってる?」
「え?」

 それから沈黙の数分が過ぎ、息子が一言。「ポケカ、売る」そう言って、その日、Suicaで買った50枚を持ってきたのです。しかし、お金を稼ぐというのは、そんなに甘くはありません。「これで二千円にならなかったらどうする?」そう聞くと、息子が持つ残りすべてのポケカを手に、「全部売る!」と目に涙を浮かべていました。一度、心を鬼にすると決めたら、息子のために貫かねばなりません。「じゃあ、行こうか」と近くのブックオフに向かいました。閉店ぎりぎりに滑りこみ、早速鑑定が始まりました。ドキドキする息子を横目に、私はというと、おそらく足りないであろう残金をどうするか、次にどう導くか頭を悩ませていました。ほどなくして店員さんに呼ばれると、ポケカが金額別に仕分けられていました。およそ100枚はあるであろう息子のポケカの価値はいかに!? やはり甘くはありませんでした。300円だったのです。しかし、息子を見てみると、モヤモヤが晴れたかのようなすっきりした表情で「あと1700円か~」と、次は何を売ろうか頭をめぐらせていました。

 翌日、ゴールデンウィークがスタートし、待ちに待った富津への家族旅行が始まりました。「残り1700円は横に置いて、ひとまず楽しもう」と息子に話をしました。大渋滞を乗り越え、なんとか陽が沈む前に浜金谷に到着。おみやげ市場「ザ・フィッシュ」に寄ると、実にさまざまな海の幸が並んでいました。店頭に並んでいるハマグリを見ながら、「明日はいよいよ潮干狩りだね。いいかい? 明日狙うのは、アサリじゃない。このハマグリだよ」と伝えました。すると、息子が一言。「パパ、ハマグリって、300円もするの?」「そうだね。高級食材だからね」「ということは……僕は何個とればいいのかな?」「ん?」「あと1700円だから…」「6個だよ」「絶対6個とる!」。息子は燃えていました。宿についてから、YouTubeを観てハマグリがどこに生息しているのか家族で研究をしました。

 そして、次の日。満を持して、潮干狩りスタート。満潮になるのが早く、勝負は2時間。「ハマグリは群れでいるから、1匹いたら教え合おう」そんな話をしました。開始早々、ハマグリを見つけた私。みんなに声をかけます。しかし、そのスポットに息子は近寄ろうとはしません。自分で見つけたかったのでしょう。すでに大半の砂浜は海水でつかり、熊手でかきながら、文字通り手探り状態でした。そんななか、「あったー!」と息子が1個目をゲット。その後、次々に見つかり、記念すべき6個目も無事手に入れました。その後、無心で堀り続けた彼は、網いっぱいのハマグリを持って帰還。30個以上はとったでしょう。1700円分を優に超える働きをした息子は、帰宅後、ハマグリのお吸い物に舌鼓を打っていました。Suica二千円がポケカに溶けた珍騒動は、ハマグリの逆転ホームランで幕を閉じました。そんな息子はというと、次の誕生日にはポケカ100枚がほしいそうです。

花まる学習会 臼杵允彦

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