2024年がスタート。昨年のコラムをふりかえってみると、「観察」というテーマが多くありましたが、改めて、フラットに「観察する」ことは難しいな、と思います。
先日、小3長女、小1長男の小学校の保護者面談がありました。職業柄、家でよく子どもを観察しているつもりではいたのですが、ふたを開けてみると、「え、それって本当にうちの子ですか?」というエピソードばかり。子どもが外で見せる顔と、家で見せる顔は違っていて当然なのですが、それにしても、あまりに家での姿とかけ離れている。うーん、わたしは的確に観察できているのだろうか……。
その反省をもとに、2週間ほど自分の「観察のくせ」を分析すると、気づかないうちに自分の目にかけてしまっていた2種類のフィルターがありました。
■かくれ卑下フィルター
2歳の次女。お迎えのとき、保育園の先生から「Rちゃん、すごく踊りが上手! まわりをよく見て、ずっと踊っています」と言われ、つい私は「3番目だからですかね~」と返答。ただ、よく考えると、私の発言は「下の子だから上手」というフィルターから来ていて、その子の個性には言及できていない。
「下の子だから覚えが早い」という要素は確かにある。でも、私がアンテナを張るべきは、「よく見て」「ずっと踊っている」という先生からのメッセージ。そこから、素直に「観察力や集中力がある」「踊り、体を動かすのが好き」という特性を見つけたらよかったな。
「子どもをほめられるとつい、『いやいや、そんなことはないですよ』と卑下してしまうのは日本人の悪い癖」と高濱が講演会でよく言っていたので気をつけていたつもりだったのですが、「○○だからこう」という決めつけも、もしかしたら「かくれ卑下フィルター」だったかもしれません。
■ないものねだりフィルター
小1長男。漢字の宿題が、一行練習したあとに、残りの部分で「練習した漢字を使った言葉を書く」というものです。同じ文字をひたすら書くよりは楽しいかな? と思っていたのですが……。
(ん? 手が止まっている? あれ、別のこと始めたよ?)
……のぞいてみると、後半で“いかに漢字を少なくしてマス目を埋めるか”ということに命を懸けて考えすぎ、逆に時間がかかっている。そして、集中力が切れて遊び始める。
ある日の漢字練習の様子。
(おいっ)と突っ込みたくなりますよね。そして、親としては心配になります。これだと書く量が足りていない……(実際に、漢字の書き順、形などはあやふや)。もっと集中して!(途中で飽きて、自由帳で遊び始めた。1ページの宿題に何分かかってるの……。)
心のどこかでわかってもいます。花まるの生徒にだったら「発想力がある! 自分で何かしら問題を作れる力もすごい!」と声をかけていたと思います。これが、この子の特性で、愛すべき部分だと。
だがしかし、親である私には、目の前のやるべきことにすっと素直に向き合って、コツコツ課題をして積み上げられる子への尊敬があり、うらやましさがあり、わが子にもそういう部分がほしいなぁと、どこか思ってしまっている。
ないものねだりに引っ張られる。あ、この「ないものねだりフィルター」を作ってしまっているのは、もしかしたら自分の心が原因かな、なんてことをぐるぐる考えてしまいました。
フラットに観察しようと思っても、気づかないうちにフィルターがかかってしまうこともある。まずは、そこに気づけたことでよし。フィルターをなくすには、考えすぎないことも大切。ただいまあるものを見つめる、目の前のものをまるっと受け入れるという心持ちも、大切なのかもしれません。
花まる学習会 勝谷里美
🌸著者|勝谷 里美
花まる学習会の教室長を担当しながら、花まる学習会や公立小学校向けの教材開発や、書籍出版に携わる。現在は、3児の母として子育てに奮闘中。著書に『東大脳ドリルこくご伝える力編』『東大脳ドリルかんじ初級』『東大脳ドリルさんすう初級』(学研プラス)ほか