【花まるサマースクール2024】カトパン/加藤崇彰🌻カトパンと行く!究極の野外体験 無人島サバイバル

【花まるサマースクール2024】カトパン/加藤崇彰🌻カトパンと行く!究極の野外体験 無人島サバイバル

2024年度の花まるサマースクール、現場からのレポートをお届けします!
今回は、「カトパンと行く!究極の野外体験 無人島サバイバル」のコースを引率した「カトパン」のレポートです。

 

🏝無人島サバイバル🏕

このたびは大切なお子さまの背中を押して無人島に送り出していただき誠にありがとうございました。


今回の無人島サマースクールのテーマは「挑戦」でした。Zoomオリエンテーションでは、「無人島の野外体験はすでにはじまっています。荷物の準備も自分でやるか、やらないか。一歩の勇気・挑戦で、見える世界は変わります。みんなの挑戦を応援しています」と子どもたちに伝えましたが、我々スタッフ側にも、今回の無人島サマースクールには「挑戦」が詰まっていました。


1つ目の挑戦は、昨年度までは3泊4日だったコースを5泊6日にしたことです。最近、時短術やタイパといった言葉をよく耳にするようになりました。私自身も日々多くのことに追われていると、いかに無駄を省いて効率よく過ごすか、ということばかりを考えています。これまでに無人島で子どもたちと一緒に野外体験をおこなうなかで、ふと気になることがありました。それは、子どもたちと無人島で過ごすスケジュールを事前に事細かく決めすぎてはいないか、ということです。子どもたちにとっては一生に一度の体験だから、あれもこれも体験させたい、というこちら側の勝手な欲が生まれ、気がつくとスケジュールを分単位で決めていました。体験を詰め込んでいくと、「効率よく」そして「無駄を省く」という考えになり、いつの間にか無人島という一見自由な場所にいるように見えて、常に時間に追われ、「無駄」や「余白」はどんどんなくなっていました。そして行きつくところは、人間が自然をも支配しているという感覚でした。これでは現代社会と何も変わらず、無人島の魅力が半減してしまうのではないだろうか、そんな疑問が湧いてきたのです。


そもそも無人島の魅力って何なのか、改めて考えました。無人島は、未知に包まれ、ワクワクが詰まった場所でもありますが、現代社会のように「安心」「安全」「快適」な場所ではなく、「不安」「危険」「不快」な場所ともいえます。 自分ではコントロールできない方向からの刺激をたくさん受け、人の脆さや弱さを知る。そういう経験のなかで知覚を鍛えることができるのが無人島の魅力なのではないでしょうか。結果重視の世の中。どうしても最後に残ったひとつに意味をもたせようとしますが、因果関係では説明できない無数の無駄にこそ、いざというときの一手につながるものがあるように思います。そこで、我々子どもたちを迎え入れる無人島スタッフとしてできることは、「無駄」と「余白」をこよなく愛し、「非効率」を追い求め続けることなのではないか、そう考えるようなりました。


そんな想いもあり、今回の無人島サマースクールは、5泊6日とこれまでよりも長い泊数のコースにし、子どもたちが「やってみたい」ことを「やってみる」経験になるように、「余白」をつくることを意識しました。


2つ目の「挑戦」は、船着き場がある本土の安芸津町に無人島教育の拠点となる施設「はなコミあきつ」をつくったことです。「枠」をとび出して、子どもから大人まで、みんなでワクワクする社会をつくっていく。私たちは、教育を通してそんな未来を実現させるべく、今年の2月から動き出しました。まずは、安心・安全な場所として、自分が満たされるというホームベースのような役割をこのはなコミあきつで担っていきたい。そのうえで、やってみたいをやってみる経験、楽しそうだと思ったことをやれた経験、それらの成功体験を通して自己肯定感・自己効力感を養っていきたいと考えました。


そして迎えた今回の無人島サマースクール。子どもたちにとっても「挑戦」の連続でした。特に印象的だったできごとを2つご紹介します。


1つ目のできごとは、5日目の朝のこと。はなコミあきつで朝食を食べ終えて島に向かう準備をし、車に大リュックや食材を積み込んでいざ出発しようと歩き出したとき、数名が体調の異変を報告してきました。さらに、その場で全員に対して体調に不安があるかどうか確認したところ、約半数の子どもたちが手を挙げました。

無人島の鉄則のひとつである「体調には鈍感でいてはならない」。その言葉通り正直に自分の意見を伝えてくれた子どもたち。

そこで、一度はなコミあきつに戻って、休息をとることにしました。休憩を経て、何人かに声をかけてこのあとどう過ごしたいかを問いかけてみたところ、 「無人島で寝るのが不安だから、いまから無人島に行ったとしても夕方にははなコミあきつに戻ってきて夜ごはんもここで食べたい」 「はなコミあきつのほうが安心できるから、夜はここがいい」 といった声が多く聞こえました。子どもたちの声を聞いて私自身大変悩みました。 5日目ということもあり、子どもたちの疲れも溜まってきていて、さらに外は炎天下。責任者として子どもたちの命を守ることが最優先事項であり、島に行かないという判断が一番に出てきました。一方で、その決断をすることで子どもたちの「挑戦」を奪ってしまうのではないか、ということも考えました。はなコミあきつが「安心」「安全」「快適」な場所であるがゆえに、無人島の「不安」「危険」「不快」から身を遠ざけようとしているのではないか。 そこで、私の正直な気持ちを子どもたちに真正面からぶつけ、子どもたち一人ひとりが自分の心と体と向き合う時間をとることにしました。


各班のリーダーと1対1でじっくりと対話をして、一人ひとりの想いを聴きました。この無人島コースに参加した理由、ここまでの2泊3日の無人島滞在を振り返って感じたこと、いまの気持ち、体調など、子どもたちは正直な気持ちをリーダーに話してくれました。いろいろな思いや葛藤が渦巻き、なかには涙を流す子も。それだけ本気で自分自身と向き合う時間となりました。そして、最終的には島に行くという「挑戦」が決まりました。この間、約5時間。子どもたち一人ひとりが自分の意思で大きな大きな一歩を踏み出した瞬間でした。


2つ目のできごとは、今回の参加者のなかに、この無人島コースに参加すること自体に後ろ向きの子がいたことです。その子は正直に「やりたくない」という想いをぶつけてくれました。そしてその子に対して、大人も子どもも本気で向き合いました。班での話し合いの時間もとり、一人ひとりが正直な想いを伝えることもありました。なかには自分の想いが届かず、悔しさのあまり涙を浮かべる子もいました。しかし、どんなことがあろうとも、誰一人としてその子を見離すことなく、その子のことを信じ、あたたかい言葉をかけ続け、その子と向き合ってわかり合おうと「挑戦」し続けたのです。私はそんな子どもたちの思いやりに心を動かされ、助けられ、感情を揺さぶられ、何度も涙を流しました。そしてコース後半、子どもたちやリーダーの想いがその子に届き、行動に変化が現れたのです。それぞれが表に出さずとも、いろいろな想いを抱いていまを生きている。そのなかで、本気になって感情をぶつけあうことができた仲間がいたからこその変化だったと感じました。子ども14人、大人6人、全員の「挑戦」でした。


無人島での焚火タイムで、ある子がこんなことを話していました。 「みんなそれぞれ個性があって、その個性が良いなと思った」 誰か一人が欠けても、このメンバーでの最高の時間を過ごすことはできなかったでしょう。このコースに集った全員との、一期一会の出逢いにただただ感謝の想いでいっぱいです。他人と競争するのではなく、みんなと共創していく、そんな世の中になればいいな、と願っています。


これでおしまいではなく、またどこかでみなさまにお会いできる日を楽しみにしています。 改めまして、花まるサマースクールにご参加くださり本当にありがとうございました。



2024年 夏
花まる学習会 カトパン/加藤崇彰

 

 

加藤崇彰(かとうたかあき)/カトパン

花まる学習会(関西ブロック)

 

🌳花まる野外体験公式サイト
https://hanamaruyagai.jp/

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