【花まるリビング㊳】『「好き」を観察し、「好き」から攻略する』勝谷里美 2024年9月

【花まるリビング㊳】『「好き」を観察し、「好き」から攻略する』勝谷里美 2024年9月

 花まる学習会とスクールFCのスタッフ有志で集まった読書会で「子どもに歴史を好きになってほしいがまったく興味がない。何から読ませるのがよい?」という話題になりました。
 おもしろかったのは参加者の「おすすめ」が多種多様だったことです。
――歴史漫画は王道!
――ファンタジー小説が好き。古代日本を舞台にした物語を読んで日本史好きになった。
――人に興味がある。気になる人を深掘りするなかで、時代背景が気になってきた。
――理科が好き。科学史を軸に学ぶと、歴史にも興味が広がっていった……など。
 花まる学習会では、低学年までは特に「学ぶことは楽しい」と感じてもらうことを重視しています。それは「好き」に勝る原動力はないからです。根本に「学ぶって楽しいな、好きだな」という感情があれば、その先、さまざまな力へとつながっていきます。
 今回の問いへのさまざまな答えは、まとめると「自分の好きを探し、そこを切り口に興味を広げていく」です。やはり「好き」は偉大。

 わが家の話。青いハコ(思春期。親の言うことを聞かなくなり外の師匠のアドバイスが有効な時期)に入った、10歳の長女。なかなかお手伝いをしない。日々、自分の好きなことだけをしたいタイプ。
 ある日、私が一番忙しい夜の時間に「やることなーい」と言ってきました。毎度お決まりの「宿題をやったら?」「やだ」「お風呂に入ったら?」「やだ」の問答を繰り返し、いい加減、私もうんざりしていたのですが、ふと【何かに興味を持ってもらうには、“好き”から入るべし】という事例を思い出したので、
 「洗面用具の引き出しや、私の化粧品のポーチの中身、全部出していいから、整理して、古いやつ、捨ててくれない?」
と頼んでみました。すると「えー」と言いつつも「仕方ないなぁ」と整理整頓に取り組んでくれたのです。最近、メイク道具に興味を持っていた長女は「これ何に使うの?」など話しながら楽しんでいました。
 (「好き」を混ぜるとお手伝いをしてくれる!)と味をしめ「お菓子の置き場所もぐちゃぐちゃなんだよね」と言ったら、なんと、そこも片付けてくれました。(早く宿題をやろうよ……)と言いたい気持ちはあったものの、ずっと気になっていた部分の片付けが終わり、私も少しいい気分でした。

 2歳半の次女。偏食です。夕食がチンジャオロースだったのですが、案の定いやがる。ただよく観察すると、豚肉もタケノコもピーマンも「全部一緒」を特にいやがっている様子。(ん? この様子、何かと似ている)と考えてみたら、次女が積み木遊びをしている様子が浮かんできました。
 次女は「色」がとても好き。兄が五色のヒーローものを見ていたら、横で「どんないろーがすきー? 赤♪」と歌い出したり、ぬいぐるみに何かを配るときにそのぬいぐるみと同じ色のものを配ったり、こだわりがあります。ブロックで遊ぶときも色が混ざるのをいやがり、必ず一色を集めて何かを作りたがるのです。
 「色が好き」な特性を、食事にも活かせないかな?と思い実践。チンジャオロースを、ピーマン、豚肉、タケノコにそれぞれ分ける→「きみどりいろのピーマンだよ」「濃い茶色の豚肉!」「タケノコはうすい茶色~」など、食材の色に注目させる声かけをしながら食べさせたら、めずらしくぱくぱく食べてくれたのです! 自分から「ピーマンはきみどり~」と言うなど興味津々でした。毎回使える技かはわかりませんが「好き」から広げていくことの有効さを強く感じた事例でした。
 10歳にも、2歳にも「好き」を切り口にした声かけはとても効果的でした。子育てで普段の声かけにちょっと煮詰まっているとき、子どもの「好き」を観察することから始めてみる方法、おすすめです!

花まる学習会 勝谷里美


🌸著者|勝谷 里美

勝谷里美 花まる学習会の教室長を担当しながら、花まる学習会や公立小学校向けの教材開発や、書籍出版に携わる。現在は、3児の母として子育てに奮闘中。著書に『東大脳ドリルこくご伝える力編』『東大脳ドリルかんじ初級』『東大脳ドリルさんすう初級』(学研プラス)ほか

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