次女の保育園が決まり、春から復職します。いままでで一番長く育休を取らせていただけたので、新しい挑戦をしようと思い、あるオンライン育休コミュニティに一年ほど所属しました。私はオンラインのコミュニティは初めてだったのですが、同じく子育て中の人たちとつながりが深まっていく感覚はとても新鮮でした。
リアルで会ったこともない人だけれど信頼できる、自己開示できる、そんな関係が築けるのはなぜだろう?と振り返ってみたのですが、一つのキーワードとしてはやはり「共感」です。そのコミュニティの趣旨に共感して集まっているので “わかる”“そうだよね”という共感がベースにある。そうすると、自己開示もしやすくなる。お互いに自己開示をすることで、ますますその場所が大切になる。もちろん、人とは違う部分もたくさんあるけれど、それをひっくるめて、認め合える場が醸成されていく―子育てをひとりで抱えがちな人こそ、何かしらのコミュニティに出合えるといいんだろうな、と改めて考えさせられました。自分のことを理解してくれる人が増える→エネルギーをもらえる=子育てに必要な、膨大なエネルギーに充てられる、というイメージです。
また子育ての最小単位である「家庭」というコミュニティ。これまで、私にとってそこは、“戦う場所”(子育てに奮闘する、という意味で)だったのですが、そこだって自己開示してもいい場所なんじゃないかな、とふと気づきました。
ある日、次女がギャン泣きするなかでの電話対応を終え疲弊していた私に、8歳長女が「相手が言っている内容が聞こえないとイライラするよね~」と一言。おお!わかってくれる人が家庭にいた、と励まされた気持ちになりました。
また、休日の予定を確認しようと手帳を開いたときに、私が「やばい!明日までの締切を思い出しちゃった!一緒のページに書いてあるからなぁ」とつぶやくのを聞いた長女が「わかる!私も鉛筆使いたいけど、ランドセルを開けちゃうと宿題のこと思い出すから、別のところから鉛筆持ってきたよ」と。(いや、宿題はやって!)と突っ込みつつ、さりげなく言ってくれた「わかる」の一言が意外なほど嬉しかったのです。家庭でも「共感力」を発揮しあうと、みんなハッピーになれるなぁと思った事例でした。
共感してもらいたければ、自分の本音も素直に話す必要がある。嬉しいは嬉しい、悲しいは悲しい。親として毅然と基準を示すところはぶらさないことと、本音を話すことはきっと両立できるはず。
子どもの共感力を育むための方法の一つは、「本を読む」ことです。いろいろな登場人物に触れ、共感したり、この人は自分とはちがう考えだなと気づいたり。本を通じてたくさんの経験を積ませてあげたいなと思いました。
昨年の3月、この連載で次のように書いていました。
育児書に書いてあることの“一歩先がわからない”というのは、算数で「補助線をここに引く」と解説に書いてあるが、その“補助線の引き方がわからない”という悩みと似ている。 “一歩先のあり方”は、きっと、【親×子ども×家庭×学校・園×…】 といろいろな要因がからみあって、無数に存在するからこそ、親自身の感性を頼りに選び取っていかなくてはいけない……
その思いはいまも変わりません。加えて、この一年を通じて、親自身の感性に基づく選択“なんとなく”で終わらせず言語化するために、「実験する(試す)」「発見する」「記録する」「また試す」を淡々と、楽しく、繰り返す、ことが子育ての醍醐味だと気づきました。4月からも、ある一家庭の子育ての実践、発見、記録をお伝えさせていただきます。何かしらのお役に立てれば幸いです。
花まる学習会 勝谷里美
🌸著者|勝谷 里美
花まる学習会の教室長を担当しながら、花まる学習会や公立小学校向けの教材開発や、書籍出版に携わる。現在は、3児の母として子育てに奮闘中。著書に『東大脳ドリルこくご伝える力編』『東大脳ドリルかんじ初級』『東大脳ドリルさんすう初級』(学研プラス)ほか