【花まるコラム】『自分だけのおまもり』林飛翔

【花まるコラム】『自分だけのおまもり』林飛翔

 この夏の花まる野外体験・サマースクールでは、1泊2日の年長コースや、2泊3日の秘密基地作りの国や、3泊4日のサムライの国など、さまざまなコースにリーダーとして参加しました。
 秘密基地作りの国には、「マインクラフト」好きな子たちがたくさん参加していました。私の班の子たち10人へのアンケートでは、「マインクラフトというゲームが好きだからこのコースを選んだ」という子が3人。そしてマインクラフト好きは実に8人。ゲームの世界というデジタルと、野外体験というアナログの組み合わせは、デジタルにおける一種の正しい相乗効果があると考えています。

 いざ秘密基地作りがスタートすると、壁にする木々を集めることに注力している子、天井になりそうな葉っぱや枝を集める子、ひたすら石だけを運んでいる子、それぞれが役割を見つけ出し、楽しんでいます。そして、1日目の秘密基地作り終了間際。ほかのチームと比べて、半分も完成していません。私の班の子たちは、ようやくここで作ろうとした秘密基地の規模が大きすぎたことに気づきました。「完璧じゃなくてもいいから形にしよう」ということになり、入り口の外に石を並べることで、石畳のようなおしゃれな入り口ができ、ある程度形にすることができました。悔しがっているかな? とみんなにインタビューをすると、みんなは満足した様子。もっと良いものを作るぞ! と気持ちは明日に向いています。
 さて、この日の夜、私史上最大のホームシック対応が始まるとは思ってもいませんでした…。

 私の班は、小学1~6年生までの男の子が10人。そのうちのほとんどの子が初めてのお泊りでした。着いてすぐの昼食はおうちから持ってくる手作りのお弁当ということもあり、つい思い出して涙していた子が一人。時間が経って寂しくなった子は、夕食時には3人に増えていました。そしてお風呂に入り、布団を敷いてあとは寝るだけ。ここでも夕食時に泣いていた子の一人がしくしくと泣きはじめました。これは想定内だったのですが、このしくしくがすぐに伝染し、すぐに2人、3人と同様に泣きはじめました。こうなると全員がおうちのことを思い出してしまうかもと思い、その前に声をかけ、別の部屋に呼びました。
「ちょっと寂しいな~っていう子はえんた(私のリーダーネーム)のところにおいで」
するとむくむくと起き出して、10人中7人がずらーっと大移動。私もあまりの多さにびっくり。みんな我慢していたんだな~とついほほえましくなりました。「じゃあ、みんなでおうちの人にお手紙を書いて、それをお守りにして一緒に寝るのはどうかな?」と提案すると、みんな一生懸命に言葉を紡ぎ始めました。そして素敵なお守りが完成。

 「パパ、ママへ。知らない人とばっかりだけど、一人はともだちを作るね。だれにもばれないひみつきちをつくるね。いろいろがんばるね。」

 「パパとママといもうとにあいたいよ。きょうのたのしかったことは、えんたをおとしあなにおとすもくひょうをたてたことだよ。」

「ママとぱぱへ。どこででもいいからママとパパと会いたいです。今日どんなことをしましたか? ぼくはみんなとひみつきちをつくったよ。さみしいけどがんばってねるね。あさって帰るね。あといっぱい友だちできたよ。おやすみなさい。」

 「まま、パパへ。さびしいけれどがんばるよ。今日のごはんはハンバーグだったよ。木よう日にまた会おうね。あと2日がんばるね。」

 子どもたちにとって「がんばろう」と思える力の源は、やはり親なのだなと感じます。そばにいなくても見ていてほしいし、きっと見守ってくれていると信じることが安心感にもつながっていくのでしょう。

 お守りの効果もあってか、無事に眠りについた子どもたち。翌日、前日の経験を活かし「友達」と協力して一番大きな秘密基地を作りあげました。そして、みんなの目標であった「落とし穴にえんたを落とす」という目標も、見事に20回以上も達成…。2泊3日を終え、おうちの人に頑張ったことを報告するたくましい姿を、私はほほえましく見ていました。

花まる学習会 林飛翔(2023年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

花まるコラムカテゴリの最新記事