【花まるリビング㉓】『子育ては育児書よりも“奇”なり』勝谷里美 2023年4月

【花まるリビング㉓】『子育ては育児書よりも“奇”なり』勝谷里美 2023年4月

 「事実は小説よりも奇なり」といいますが、転じて、「子育ては育児書よりも奇なり」と思うことはないですか? 三人の子を育てながら、私は日々、多かれ少なかれそんなことを感じています。

 たとえば、花まる学習会代表の高濱の著書に【子どもの感性を育てましょう/美しいものを見たらそれを親が言葉にして伝えましょう】という一説があり、(よし!実践!)と思った私は「今日は月がきれいだね~」と、当時4歳の長男に伝えたところ、「そうだね、桂男(かつらおとこ)がいそうだね」という返答。(なんだそれは!?)と驚愕して詳しく聞くと、『ゲゲゲの鬼太郎』に出てくる、月に住んでいるといわれる妖怪でした。(きれいだね~ではなく、そこにとぶか!)と驚きました。

 あさがおとサボテンの一日一ページの宿題がなかなか定着しない長女。【宿題はやるもの。親はがんとぶれない姿勢が大事】という方針に共感して、実践しようとするも、あの手この手で反発して、親のエネルギーが削られていく毎日……。ついには、長女はサボテンをいかに早く終わらせるかということに熱意を注ぎはじめて、最初にすべての計算の答えの10の位を書いてしまう(※そのときの単元は、たいてい10の位が“1”だった)⇒次に1の位を書いていく、という方法を生み出してホクホクしはじめました。また、あさがおに関しては、「名文を味わって書きましょう」という目的もある教材。しかし、そんなものは意に解せず、ある日、
「わたしが詩を作るなら『笑』というタイトルで、ずっと 
 わっはっは
 わっはっは
 わっはっは
という詩にする。そしたら、これからあさがおをする子たち、楽じゃん」
と言い出しました……。
 別の人間なので当たり前ではあるのですが、親の思い通りになんてまったくいかない子育てです。
 
 ただ、この宿題のやりとりを経て、発見もありました。

―― 一日一ページの宿題を素直にこつこつすることは大切。できていないことで、この子はたぶんこの先、学習量が必要になったとき壁にぶつかる。それは事実として親も知っておくし、子どもにも伝えておこう。一方で、効率的なやり方を考える、ユーモアで切り返す、そういった部分は、頭がぐるぐる回っているともいえる。言われたことをただやるだけの、思考停止の状態にはなっていない。特にユーモアの部分はこれから先の人生で活きてくる力だよ、とは認めてあげよう ――

 育児書や教育書などに書いてある通りに実践しようとしても、結果、うまくいかないことのほうが多くて、その都度、生の反応が返ってくる。そのときに、「でも、本にこう書いてあるからその通りにしなきゃ」と枠に当てはめすぎることはなくて、予想外のその子のいいところが見つかったら、そちらも認めてあげるぐらい柔軟でありたいな、と親である私自身のスタンスも考えさせられる事例になりました。

 一人ひとりの子どもたちの、それぞれちがった彩りにあふれる毎日をのぞき見しつつ、時に寄り添い、サポートしてあげることを楽しむ一年にしていきたいと思います。そして、生の子どもの反応に困ったときは(困っていないときでも)、周囲の大人の目も借りながら。
 ぜひ、日々のお子さまの様子を、花まるの教室長にお話しください。「うわ、それは、おもしろいですね。興味深いですね」と、“育児書よりも奇なり”の子育ての道を、花まるも、ともに歩んでいけたら嬉しいなと思っております。今年度もよろしくお願いいたします。

花まる学習会 勝谷 里美


🌸著者|勝谷 里美

勝谷里美 花まる学習会の教室長を担当しながら、花まる学習会や公立小学校向けの教材開発や、書籍出版に携わる。現在は、3児の母として子育てに奮闘中。著書に『東大脳ドリルこくご伝える力編』『東大脳ドリルかんじ初級』『東大脳ドリルさんすう初級』(学研プラス)ほか

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