春は出会いと別れの季節。新しく担当することになる教室もあれば、3月で離れることになった教室もあります。ある教室では、私と同じタイミングで7名の6年生が卒業します。多くが1年生の頃から毎週、通ってきてくれた子たちです。背も高くなり、声も変わり、個性に磨きもかかりました。そんな7名の成長物語を紹介します。
1年生の頃からエンターテイナーだったAちゃん。高学年になり課題だったのは、わからないところに向き合うこと。「教えてください」と自分から言えるようになったのは6年生のときです。「わからない」に向き合うのはAちゃんにとって面倒くさいことでした。そこを乗り越えた彼女が誇らしいです。雪国スクールでは、常に班のみんなを笑わせようとする姿を目の当たりにし、Aちゃんのよさは唯一無二だと思いました。
5年生から仲間に加わったBくん。初めての作文コンテストで入賞。 高学年プラスコースのプレゼンテーションではぴったり3分で話し切り、笑いまでかっさらう秘めた力の持ち主です。雪国スクールでは宿全体のMVPにも選ばれるなど、家の外で惜しみなくその力を発揮するところが、ザ・高学年。実は初めてのプレゼンでは、常に下を見ていました。2年間で多く打席に立ち、自信を揺るぎないものにしました。
とても繊細なCくん。低学年の頃から、困っている子に助け船を出す姿を何度も見てきました。高学年になり言葉にとても敏感になりました。「その言葉はちょっとな…」常に自分の心、そしてまわりの心を見つめ、哲学者のようです。文章読解では筆者の言いたいことをとらえるのが上手になりました。またCくんの作文は講師の間でも話題になるほどおもしろかったです。AIが発達していくなかで、Cくんのように自分の言葉を持ち、心を見つめられるというのは武器になります。
思考力問題が得意なDくん。低学年の頃から問題特有のルールを見つけることに長けていました。高学年コースのSなぞ解説(思考力問題の解説を子どもがおこなう教室コンテンツ)では、なんと原稿を用意せず流暢に説明をしたのです。変に準備するよりもうまく話せるとのこと。デザインの教室コンテンツでは、週末にしっかり作成し、見事投票結果1位を獲得しました。与えられた課題の性質と効率を考えて動けるところが、彼の強みです。
Eくんは6年間、宿題に完璧に取り組み続けました。1年生の頃、一コマ目の絵を見て2コマ目(オチ)を考え発表するたこマンの時間には、毎回トイレに駆け込んでいた姿が忘れられません。それほど自分のアイデアを発信することに怖さを感じていたのでしょう。初めての発表は3年生の4月でした。そして6年生の2月のSなぞ解説。わかりやすく説明したのち、問題文にツッコミをいれオーディエンスの笑いを取りました。この成長劇は短編ドラマになりそうです。
Fくんは思考力がピカイチで、低学年のときは大人でも難しいレインボータイム(思考力問題の発展版)を器用に解いていました。Fくんがすごいのは、高学年になり、家庭の事情で欠席すると、言われなくても次の宿題を進め、休んだ分の小テストはいつやりたい、と自分から伝えにくるところです。やるべきことを自分ごととしてとらえられています。また、ボソッと言うツッコミやコメントもウィットが利いていておもしろいのです。真面目なだけでなく、まわりを笑わせることも好き。楽しい中学生活が想像できます。
芯と優しさがあるGちゃん。5年生の秋に、算数について講師に自分から質問をしました。「最小公倍数を教えてください」大人が察して教えることは簡単です。ただ、疑問点を自分でどうにかする経験を花まるでしてほしい。自分で質問できた日を境に、授業内に質問する回数も増えました。受け身ではなくなったGちゃんの今後が楽しみです。
一人として同じ人はいなく、同じ成長はありません。勉強だけをできるようにすることが目的であれば、「点数が伸びた」といった同じような成長を綴ることになるでしょう。でも、みんなと同じ一律の成長を喜ぶよりも、私はその子らしい、人としての成長を、お子さまと保護者の方と講師と一緒にこれからも喜びたいと強く思います。
花まる学習会 船水萌(2023年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。