【おはなしのキッチン⓲】『大根はエライ』平沼純 2024年1月

【おはなしのキッチン⓲】『大根はエライ』平沼純 2024年1月

 いまの季節によく出回る代表的な野菜と言えば、大根。私たちの日頃の食卓にも大根を使った料理は数多く並びますし、その調理法も多彩ですね。

・生のまま細く切って、大根サラダに
・おろして醤油をつけてそのまま食べたり、シラスやなめこ、お餅などと絡めて食べたり
・千切りにして刺身のツマに
・おでんの具にしてじっくり味をしみ込ませたり、ブリ大根やふろふき大根にしたり
・味噌汁やお雑煮など汁ものの具として
・葉っぱを炒めたり、皮をきんぴらにしたり

――などなど。生のままでも、煮ても焼いても、漬物にしてもおいしい。さらに、消化を助けるジアスターゼを多く含んでいて、ビタミンA、ビタミンC、カロテンなど栄養もたっぷり。まさに大根は、幅広い料理で活躍する「野菜の万能選手」です。
 とはいえそんな大根、料理の「主役」として使われることが多くはないこともあって、どこか「地味で目立たない存在」というイメージがないでしょうか? 人間にたとえると、真面目でおとなしい性格で、「縁の下の力持ち」という感じ。
 食卓では大活躍しているんだから、もっともっとスポットライトを浴びて注目されてもいいのになあ……。

 そんな思いをこめて描かれたのが、久住昌之さんによる『大根はエライ』という本です。「普段は目立たない大根が、いかにエライか」をユーモアたっぷりの文章とイラストで描いた内容で、2018年に日本絵本賞を受賞しました。
 作者の久住さんは、大ヒットドラマ『孤独のグルメ』の原作者の方。食に対する深い関心と、食材や料理をつくる人へのリスペクト、そして抜群のユーモアセンスが、この絵本にも遺憾なく発揮されています。
 さらにこの絵本には、思わず「へー!」と言ってしまうような豆知識がたくさん。大根というたった一つの入り口から言葉、歴史、科学などあらゆる領域の知識へとつながっていき、「知る」ことの純粋な楽しさが味わえます。

「大根役者」は演技の下手な役者さんの悪口だ。
 でもこれは、大根の解毒効果で、生ものと食べると食あたりしないことから、「あたらない」が「芝居に当たらない(客が入らない)」にかけられたもの。長所が悪口につかわれる大根の悲劇。
 大根は、はるかむかし、地中海沿岸でアブラナ科の一種として生まれ、シルクロードをとおって、日本にもちこまれた。
 日本の気候は大根作りに合っていて、日本人も大根の味をすごく好んだみたい。大根は改良され、今のように大きくなり、味も形もさまざまなものが作られるようになったのだ。
 大根は、日本で生産量が最も多い野菜のひとつなんだよ!

(久住 昌之  文・絵『大根はエライ』福音館書店より)

 普段何気なく食卓に出されるものでも、このようなちょっとした知識を得るだけで見え方が変わったり、愛着がわいたりします。ぜひお子さまと一緒にオリジナルの大根料理にチャレンジして、彼らの新たな魅力を感じてみてください。

スクールFC 平沼 純

『大根はエライ』
久住 昌之  文・絵
(福音館書店)

【レシピ】大根と長芋のポータージュ

 

大根……10㎝
長芋……5~6㎝
長ねぎ……15cm
昆布だし……200㏄
豆乳…… 200㏄
白みそ……小さじ1
塩、胡椒、オリーブオイル……適量

①大根と長ねぎは薄切りにする。長芋は皮をむいて1cmの輪切りにする。
②鍋にオリーブオイル少々を熱し、①をしんなりするまで炒める。昆布だしを加え蓋をして5分蒸し煮にする。豆乳と白みそを加えてブレンダーにかけ、塩、胡椒で味を整える。

 

【レシピ】ピーラーリボン大根

 

小さいお子さまと一緒にお料理するときにピッタリな道具の一つ、ピーラー。ぜひお子さまと一緒に料理してみてください。
大根をきれいに洗い、ピ―ラ―で皮をむく要領でリボン状に薄くスライスするだけ。あとは、お好きな鍋料理にたっぷりとお使いください。
このピーラーリボンの大根は、薄くて火の通りが早く、柔らかく食べやすいので、小さいお子さまでもとても食べやすい形状です。寒い季節には、しゃぶしゃぶや寄せ鍋などの鍋ものに、鍋もの以外にもサラダ、酢のもの、塩もみして浅漬け風にしてもおいしいですよ。

 

【レシピ・写真提供】
料理家 江口 恵子(natural food cooking)

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