学習指導、受験指導と同時に子どもの本にかかわる仕事もさせていただいていることもあって、年間を通してかなりたくさんの本を読んで、子どもたち、保護者の方々におすすめ本を紹介します。
しかし時々、「先生、この本おもしろいから読んでみて!」と、逆に教え子たちからおすすめ本を紹介されることもあります。去年、とある理科好きの6年生の教え子にすすめられたのは、『絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている』(左巻健男/ダイヤモンド社)というノンフィクションでした。これが、個人的にはかなりの「大当たり」で、寝る間も惜しんで最後の章まで一気読みしてしまいました。
2021年の出版以降、「学生時代にこれを読んでいれば、おそらく化学嫌いにはならなかった」と名だたる書評家たちに絶賛されたこの本は、私たちの身のまわりにいかにたくさんの「化学」があるか、そしてその「化学」がいかに人類の歴史を大きく変えてきたのかを魅力たっぷりに解説した、「最強の化学入門書」です。火、金属、アルコール、食物、薬から核物質まで――。私たちが生活のなかで目にするものや、教科書、新聞などで目にするものを、少し違った角度から見えるようになること請け合いの一冊です。
この本で、まるまる一章をかけて説明されているのが、日本人にはなじみの深い料理、カレーです。カレーの起原からその材料まで、「化学」を通して見てみるとこんなにもおもしろくなるのかと感じられる、おすすめの章です。
カレーの語源は、南インドのタミル語のカリ(汁)ではないかといわれている。小麦粉を入れてとろみをつけるようになったのは、十八世紀末ごろにイギリスに紹介されてからである。十九世紀になると文明開化の日本に渡来する。(中略)大正時代になると、ソース型から、ジャガイモ、ニンジン、タマネギ、牛肉あるいは豚肉などの具がいろいろ入り、黄色みがあって、やや辛いという、シチュー型のものに日本化されたのである。現在のカレーはこの大正時代の日本型カレーを引きついでいる。
(『絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている』左巻健男/ダイヤモンド社より)
個人的には、カレーの材料として定番のジャガイモの説明を興味深く読みました。
・ジャガイモの原産地は南米のアンデス山地、野生種は「小指の先ほど」の大きさで毒がある。
・王妃マリー・アントワネットがジャガイモの花を髪飾りにしたことで一気にヨーロッパ中に広まった。
・ジャワ(ジャガタラ)から来たオランダ人によって伝わったので、「ジャガイモ」という名になった。
――などなど。思わず「へー!」と言ってしまうおもしろトピックが満載です。
これからの季節、色とりどりの春野菜を使った野菜カレー、カツオなどの春の魚を使ったフィッシュカレーなどをお子さまと作ってみてはいかがでしょうか? その際、上記のことを少し知るだけで、なじみ深いカレーが途端に奥深いものに感じられることと思います。
2年にわたって連載してきました「おはなしのキッチン」、今回がひとまずの最終回となります。毎回さまざまな角度から「本×料理」の魅力的な世界を紹介できればと思ってお届けしてきましたが、少しでもみなさまの生活が、本を通して、料理を通して「ちょっとおもしろく」なっていましたら幸いに思います。江口恵子先生、2年間にわたって魅力的な料理の数々をありがとうございました! みなさま、また別の機会でお会いしましょう!
スクールFC 平沼 純
【レシピ】スープカレー(4人分)
鶏手羽先…4本
ニンジン…1本
玉ねぎ…1個
ジャガイモ…小さめ2個
ウスターソース…大さじ1
カレー粉…大さじ3~4
ガラムマサラ…小さじ1
クミンシード
パウダー…小さじ1
水…600ml
チキンブイヨン…小さじ1/2
塩・コショウ…適量
おろしにんにく…1片分
オリーブオイル…大さじ1
茄子…1本
パプリカ…1/2個
かぼちゃの薄切り…4枚
れんこんのスライス…4枚
揚げ油…適量
①鶏手羽先に、塩、コショウ少々とおろしにんにくを揉み込む。
②鍋にオリーブオイルをしき、①と粗みじん切りにしたニンジン、玉ねぎをじっくり炒める。
③鶏肉の色が変わったら水とチキンブイヨンを入れ、蓋をして15分煮る。
④皮を剥いて半分に切ったジャガイモ・ウスターソース・カレー粉・ガラムマサラ・クミンシードパウダーを加えてジャガイモが柔らかくなるまで5分ほど煮る。
⑤ジャガイモが柔らかくなったら、塩・コショウで味を調える。
⑥好みの野菜を多めの油で揚げ焼きにし、⑤のカレーに添えてできあがり!
【レシピ・写真提供】
料理家 江口 恵子(natural food cooking)