まだ11月ですが、街を歩いてもクリスマスを意識したイルミネーションを多く目にするようになってきました。今年のクリスマス、みなさんはどのように過ごされるでしょうか?
『クリスマスのまえのばん』(クレメント・C・ムーア)や『ちいさなもみのき』(マーガレット・ワイズ・ブラウン)、『さむがりやのサンタ』(レイモンド・ブリッグズ)など、クリスマスを題材にした絵本は数多く存在しますが、それらをひも解いてみると、日本とはまたちがった外国のクリスマスの風習が垣間見えて興味深いです。
オランダを代表する児童文学作家であるリタ・テーンクヴィストと娘のマリット・テーンクヴィストによる『おじいちゃんとのクリスマス』(冨山房)は、東欧の国チェコのクリスマスの風景が描かれた、一読忘れがたい絵本です。
舞台はチェコの首都プラハ。町に一人で暮らすおじいちゃんのために、孫のトマスはクリスマスの夜に食べる生きた鯉を、マーケットで買ってきました。チェコの古都では、クリスマスのお祝いにチキンやターキーなどではなく、鯉をフライなどにして食べる風習があるのです。ところが、トマスは家に持ち帰った鯉に「ペッポ」という名前をつけ、かわいがるようになってしまいます……。
この物語は、絵本としては決して短くはないページ数を割いて、鯉やおじいちゃんに対するトマスの心情を丁寧に描いていきます。ペッポを家に持ち帰る途中でも、犬などに襲われないよう守ってあげたり、弱ってきたら水をかけてあげたり――。本来であれば、クリスマスの夜に「食べられる運命」にあるペッポはどうなるのか? トマスにとってきっと忘れられないクリスマスになったであろう、この物語の心温まる結末は、ぜひこの絵本をひも解いてご確認ください。
ちなみに、チェコのほかにもポーランドやドイツの一部地域でも、クリスマスに鯉を食べる風習はあります。それは、かつて相次ぐ戦争により慢性的な食糧不足が発生した際、比較的短時間で成長するタンパク源である鯉に注目が集まったからとのこと。また、多くの鯉料理にはポテトサラダが添えられますが、それも同様に、戦時下で食糧としてのジャガイモがよく育てられていたことの名残であるようです。いわば、クリスマスの鯉料理とポテトサラダは、東欧の人たちにとって「生命の象徴」とも言える料理かもしれません。
現代の日本ではなかなか生きた鯉を買って自宅で料理するのは難しいですが、たとえばトマスとおじいちゃんのように「鯉の形をしたクッキー」を焼いてみたり、たっぷりのポテトサラダや、鯉に見立てた別の魚料理を作ってみたりすると、一味違うクリスマスになるかもしれません。
スクールFC 平沼 純
【レシピ】魚のポテトサラダ
ジャガイモ(中)……6個
酢……大さじ1
玉ねぎ……1/4玉
きゅうり……1本
パプリカ(赤)……1/2個
塩……小さじ1/2
ゆで卵……2個
マヨネーズ……80g
①ジャガイモは皮を剥いて3~4等分に切って鍋に入れる。ジャガイモがかぶる程度の水を注ぎ、塩(分量外)少々を振って火にかける。沸騰したら蓋をして弱火でジャガイモに竹串がすっと通るくらい柔らかくなるまで、12~15分茹でる。
②お湯をゆでこぼし、鍋をゆすりながら底に残った水分を飛ばし火を止める。すりこぎ棒やゴムベラなどでジャガイモを潰し、熱いうちに酢を回しかけて全体をよく混ぜ、ボールに移して冷ましておく。
③玉ねぎは薄切り、きゅうりは2ミリ厚の輪切り、パプリカは半分をさらに縦3等分に切り横薄切りにする。ボールに入れて塩をまぶし軽く揉んで5分ほどおく。
④しっかり水気を切った③、殻を剥いて粗く刻んだゆで卵を②に加え、マヨネーズを加えて満遍なく混ぜる。塩、胡椒(分量外)で味を調える。
⑤楕円形や長方形のお皿に④をこんもりと盛り付け、スプーンやお箸を使って魚の形に整える。
【レシピ・写真提供】
料理家 江口 恵子(natural food cooking)