【花まるコラム】『やさしい数字』梅﨑隆義 2023年10月

【花まるコラム】『やさしい数字』梅﨑隆義 2023年10月

 小学生にとったアンケートで「好きな科目」「嫌いな科目」のどちらでも同じ科目が1位になる、ということが10年ほど続いているようです。ご想像の通り、「算数」です。(学研教育研究所「小学生白書」より)
 小中学校の科目で何が一番好きだったかと聞かれたら「算数」「数学」と私も答えます。現場で子どもたちと接している感覚では、低学年のうちは算数が好き!むしろ何でも好き! と声にする子は多く、学年が上がっていくと(おそらく割合や立体の体積の単元で、計算が複雑になるにつれて)算数が嫌いと声にする子が増えてきます。中学生から数学になったタイミングで取り戻す子もいれば、引きずったままに高校生になって「数学がイヤなので、文系にいきます」とトドメの一言を放つ卒業生は何人もいました。

 2年生の計算で、繰り下がりの引き算を扱う回がありました。 25-17 を筆算で書いて、「このままだと5から7の引き算ができないから、隣から10借りてきて……」と誰もが聞いたことのあるフレーズを使って計算のやり方を説明していたときのことです。
「えっ⁉……やさしいじゃん」
男の子のぼそりとつぶやく声が聞こえました。友達が鉛筆を忘れたときや、傘がないときに貸してあげるというのは、やさしいこと。「借りる」という音を聞いての反射的な一言だったのかもしれないですが、数字に対してもこういう感覚を抱いているのはなんともおもしろいなと感じました。計算自体は複雑になっていても、少なくとも「嫌い」という要素はいまのところはなさそうです。

そんな一件から思い出した小話をひとつ。 142857 という数字があります。これがなんともおもしろい数字で、

と、かけ算していくと「142857」の並びがぐるぐると現れるのです。さて、この文面を読んでいただいているみなさまには、ぜひ電卓を手に取って×7の計算結果を見届けてほしいところです。繰り下がりが「やさしさ」ゆえの計算なら、このかけ算はひょうきん者というべきか、空気が読めないのか……。

4年生で「大きな数」(億・兆が出てくる単元です)で苦戦する子たちから、「1桁くらいずれたってどうでもいいじゃん!」という主張がありました。「120億」が正解の問題で「1200億」と答えて×になったことにご立腹の様子です。
 まず「億」という漢字が書きづらいことで、すでにイライラモード。そもそも「億」という単位の数字は日常でそう頻繁に使うものではないので関心も薄い。企業の予算レベルの数字ですし、テストの点数でお目にかかることはまずありません。
 地球が誕生してから46億年
 日本の人口は1億2千万人 
 年末の宝くじ1等賞金が10億円
あたりがぱっと浮かんでくる「億」の数字でしょうか。このあたりが1桁ずれてしまったら大変! 地球誕生から4億年なら、ようやく海ができたかどうかという頃です。生命らしい存在はまったくありません。日本の人口が12億だったら、学校の運動会は満員の東京ドームのような人だかりに。宝くじの賞金が100億円なら……これは嬉しい! 広がる夢は10倍以上です。
 そんな話をしてけらけらと笑いあったあと、彼らは「ほんの少しだけ丁寧に扱ってあげないとな」と思ってくれたのか、ゆっくりと続きの問題に取りかかったのを覚えています。

 できるかできないかはもとより、算数が好きになるには「おもしろい!」と思える経験があることが必須です。学術的に正しいことは教科書をはじめたくさんの本に書いてありますから、経験を積んだ大人たちがどうやっておもしろく見せて・伝えていけるかが鍵を握っていますね。教室の子どもたちにも、縁あってかかわってくださる大人のみなさまにも、算数のおもしろい世界を伝え続けることを使命に、明日も教室に行ってきます。

花まる学習会/スクールFC 梅﨑隆義


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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