暑い夏も終わり、朝夜冷える季節になってまいりました。ふわっと金木犀が香ると、疲れが和らぎ、心が落ち着きます。季節の変わり目を感じると、また年月が経ったんだなと、実感が湧きます。年月とともに、日々成長を続ける子どもたちの、教室での一場面をお送りします。
年長クラスで行う「思考実験」に、「四色塗り分け」というものがあります。模様の枠線だけが書いてあり、となり合うマスが同じ色にならないように、枠のなかに色を塗っていく実験です。子どもたちは、となり同士が同じ色にならない組み合わせを考えながら試行錯誤し、思考を積み上げていきます。実は、どんな模様も「となり同士が同じ色にならないこと」をルールにして四色または三色で塗ることができます。
「どんな塗り絵でも、となりに同じ色がこないように四色で塗ることができるよ!…でもね、実は、三色でもできるんだって!」
始める前にそう伝えると、「やってみたい!」と目を輝かせる子どもたち。2ページを四色で完成させてやり方をマスターすると「こんどは三色でやってみたい!」という子が数人出てきました。「いいね!実験してみよう!」と伝え、一生懸命塗り始めたそのメンバーは、見事に三色で塗り分けることができました。しかし、子どもたちの挑戦は終わりません。
「先生、次は二色でやりたい!!」
同じ色がとなり合わないことがルールですから、二色ではどこかで確実にとなり同士が同じ色になってしまい、どう頑張っても成功させることはできません。けれども、「二色ではできないから、やめておこうね」とは言いませんでした。それを伝えることで、その日の学びが「二色ではできない」という情報だけになってしまいます。「二色ではできないんだ」ということを実体験を交えて知ることで、記憶に残り続けます。また、大人の凝り固まった「二色ではできない」という考えを覆すことがあるかもしれません。やってみたい!と感じたことはまずやってみる。時間が許す限り、子どもたちは二色でチャレンジしました。何度挑戦しても、どこかで必ずとなり同士を同じ色で塗るしかなくなってしまいます。痺れを切らし、「ん~塗れなかったよ…」と少し残念そうな顔をしていました。
「最後までよく頑張ったね。成功することだけじゃなくて、できないんだとわかることも実験だね」
四色で成功したら次は三色、次は二色で、と、子どもたちの好奇心が光り続けた思考実験でした。「2色での塗り分けはできない」とわかったことも、貴重な学びだったと思います。
頭から「できないからやめておこう」とストップをかけるのではなく、失敗も経験できる時間を提供することは、花まるの授業のなかで大切にしていることの一つです。
花まる学習会 小幡七海(2021年)
*・*・*花まる教室長コラム*・*・*
それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。