【花まるコラム】『幸せのアナウンス』川村優駿

【花まるコラム】『幸せのアナウンス』川村優駿

 「朝晩冷え込む季節となっております。どうかご体調、お気をつけてお過ごしください」

 先日、帰宅するときの電車内で流れたアナウンス。到着駅や到着時刻など、必要なことの伝達が終わったあとに、この一言が添えられていました。必要あるかないか、やったほうがいいか悪いかという“考え”からくる行動ではなく、心から相手を思う“優しさ”からの一言。寒い季節でも、温かみを感じられた出来事でした。

 今月の小学生クラスの特別授業は、年に一度の作文コンテスト。一枚目を書き終えたRちゃんが、私のところに完成した作文を持ってきました。一通り読んで作文の内容について会話をしたあと、彼女が席に戻るとき「Rちゃんの作文、すごく気持ちが伝わってきたよ。読んでいてワクワクする作文だった!」と伝えたところ、「イエ~イ!!イエイ!イエイ!!」とそんなにうれしいのかと思うくらい飛び跳ねて喜んでいました。私が感じたことを素直に伝えただけでしたが、まるでRちゃんの鼻歌が聞こえてくるかのようなご機嫌な表情に。すぐに二枚目も書き始め、結局この日は時間ギリギリまで夢中になって書いていました。
 私がRちゃんに何気なく伝えた一言。褒めようとして褒めたわけではなく、私が感じたことを素直に伝えただけです。それが、こんなにも喜んでもらえるとは思いませんでした。また、その後のRちゃんのやる気が向上した姿を含め、その影響力にとても驚きました。この出来事から、子どもたちに限らず、相手が幸せになる瞬間というのは、本当の意味で言葉や思いが伝わったときなのかもしれないなと感じました。

 そしてもう一つ、授業終了間際のことです。この日も授業終了の挨拶をして「いち早くお迎えに来てくださった保護者の方のところに駆けつけなきゃ!」とあわただしくしていました。そんななかでも、「先生~、来週は折り紙を使うの~?」「先生、水筒な~い!」と私や講師に話しかける子どもたち。それはかわいいところなのですが、「ちょっとまたあとで話を聞くから待って!」というのが私の本音でした。
 しかしこのとき、「先生!」「どうしたの?」「…今日も花まる楽しかった~!」年長のHくんがせかせかする私の前まで来て伝えてくれました。「それはよかった。ありがとう」その瞬間、私はせかせかしつつも、すごく心が温かくなりました。Hくんのこの一言。“たった一言”と言ってしまえばそれまでかもしれませんが、受け取った私は思わず笑顔になってしまいましたし、とても幸せな気持ちになりました。

 最近は花まるの教室で、ただただ目の前の子どもたちの幸せと成長を願い、そのとき感じたことや思ったことを伝えるようにしています。冒頭の車掌さんや年長のHくんのように相手を幸せにする一言”を私もまわりの人に届けたい。花まるの教室でも、子どもたちと保護者のみなさまの心が幸せになれる“一言”をお届けできるよう、日々努めてまいります。

花まる学習会 川村優駿(2022年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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