【花まるコラム】『そのままでおもしろい』小幡七海

【花まるコラム】『そのままでおもしろい』小幡七海

 私は小さい頃からおもしろいことが大好きで、お笑い芸人に憧れ、目指そうとしたこともあるくらいでした。芸人のお仕事はネタを作り、人を笑わせること。時に「こんな設定があったらおもしろい」と架空の世界を作り上げることもありますが、子どもたちを見ていると「日常そのものに笑いがあふれ、ネタになっている!」と感じることがたくさんあります。大人からすると少しイライラしてしまうような場面でも、子どもたちの言動でそんな気持ちを忘れられる。そんな、花まるの教室で起きたエピソードを紹介いたします。

◆マッチ知ってるよ
 花まるの教材「さくら」(精読教材)で扱った物語に、「マッチ」が出てきたときの話です。いまでは“火をつけるもの”といえばライターやチャッカマンのほうが主流ですから、子どもたちはマッチを触ったことがあるのか、知っているのかを確認するために、「マッチは何をするためのもの?」と聞いてみました。すると、「火をつけるもの!」と多くの子が答えました。「どうやって火をつけるの?やってみて!」と言うと、多くの子が箱を持って棒を箱にすり合わせる仕草をするなか、1年生のTくんは「こうだよ!」と言って手をすり合わせ、木をこすり合わせる「火起こし」の仕草をしていました。「マッチよりも原始的!」まさかの言動にみんなで笑い合っていました。

◆自分のもの!
 年長のSくん。キャラクター柄のカバーがついている新しい消しゴムを大切そうに持っていました。それを見たお友達がSくんに話しかけます。「それ、Aくんの消しゴムだよ?」と。確かに私もAくんが同じ消しゴムを使っているのを見たことがありました。(SくんがAくんの消しゴムをとった…?まさか…)もしそうならば、同じことが起こらないよう、教育者として伝えないといけない!と身構えたのですが、パッとAくんの筆箱を見ると、同じ消しゴムが入っていました。たまたま同じ柄の消しゴムだったようです。私はホッと安心しましたが、「それ、Aくんのでしょ?」と討論が続いていました。Sくんは自分のものだと伝えたい一心で、「違うよ、僕のだよ!この消しゴムはね、自力で買ったんだ!」と一言。「自力で」と、最近覚えたであろう言葉を駆使し、「絶対に自分のものだ!」ということを伝えたかったのだろうなと、私は思わず微笑んでしまいました。

◆灯台下暗し
 いつでも120%の力でものごとに取り組み、どんなことにも夢中になれる2年生の Kくん。おっちょこちょいなところもありますが、それがみんなから愛されるところでもあります。あるとき「消しゴムがない…」と探していました。「先生、消しゴムがどこにもないんだ…!」「筆箱のなかは?」「ない!」「鞄のなかは?」「ない!」「お尻の下とかじゃない?」「ない!」どこを探しても見つかりません。授業を進めたいのに時間だけが過ぎていき、こちらも焦っていたのですが、結局「あ、手に持っていた!」とKくん。まさか「手に持っていた」なんて…。落語のようなオチのある展開に、焦りも忘れ、思わず笑ってしまいました。

 大人になると、思いもよらない言動にヒヤッとしたり、イラっとしたりしてしまうことも。しかし、子どもたちは悪気なく、素直に真っ直ぐな心でいるだけなのです。彼らに共通しているのは、「ありのまま」であること。どんな子も自然体でいておもしろい。「自分のことをおもしろいと思わない」「自分には個性がない」と言う子もいますが、そんなことはありません。誰しもおもしろいところがあります。同じできごとでも、大いに笑っておもしろがれる人がまわりにいるかどうかで、意識が変わっていきます。日常に笑いのネタは潜んでいます。日常でそのようなエピソードを見つけたら、ぜひ私に教えてください。

花まる学習会  小幡七海(2022年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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