【花まるコラム】『報われない努力』髙橋駿輔

【花まるコラム】『報われない努力』髙橋駿輔

 先日まで行われていた北京オリンピック。コロナ禍での開催が懸念されていましたが、無事閉会式まで執り行われました。ご自宅でお子さまと一緒に観戦された方も多いのではないかと思います。個人的には、平野歩夢選手がスノーボードハーフパイプで金メダルを獲った歴史的瞬間をリアルタイムで見られたことが一番記憶に残っています。
 そんな北京オリンピックですが、何度か驚きの場面もありました。代表的な場面は、ノルディックスキージャンプ混合団体で、高梨選手がスーツの規定違反により失格になった場面ではないでしょうか。同競技では、高梨選手を含む4か国5人の選手が、明確な意図が解明されていない検査のために失格になりました。選手たちのこれまでの努力は、私が簡単に語ることはできないくらい壮絶なものだったと思います。その努力が一瞬で泡となって消えていく。これほど残酷な結末はありません。
 その翌日にはフィギュアスケート男子のショートプログラムが行われました。前回の金メダリスト羽生選手に期待が寄せられるなか、氷の穴にはまってしまい、演技冒頭のジャンプが失敗に終わります。立て直しを見せますが、結果は全体で8位と大きく出遅れました。ショートの順位が尾を引き、最終的に4位という結果でオリンピックを終えた羽生選手。そのときのインタビューでは、
「一生懸命頑張りました。正直、これ以上ないくらい頑張ったと思います。報われない努力だったかもしれないですけど」
と、時折声を震わせながら話していました。これまでスポーツ選手の口からは「努力は報われる」という言葉を聞いたことはあったのですが、羽生選手が「報われない努力だった」と言い切っていたことが衝撃的だったのを覚えています。この羽生選手の言葉に対し、「努力は無駄にならない」「何かにきっとつながる」という前向きなコメントも寄せられていましたが、結果がすべての大会ではそうも言えないときもあるでしょう。

 身近な例だと恋愛も似ています。好きな子に振り向いてもらうためにおしゃれをして、清潔感を大事にして、何度も一緒に出かけた。思い切って告白をしたが、結局は振られてしまった。私も経験がありますが、このときの絶望感はすさまじいものです。世界が終わったかのようにだって思えます。その恋愛が成就されなければ、振り向いてもらうために頑張った努力が報われることはないでしょう。

 ここで、一つの言葉を紹介します。

 “努力をした者が成功するとは限らない。
 しかし、成功する者は皆努力している”
 ― ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーベン ー

かの有名な音楽家ベートーベンが残した言葉です。努力をしたからと言って、必ず夢や目標が叶うわけではない。しかし、目標を達成した人、夢が叶った人は必ず努力をしている。報われない努力は存在するが、夢を叶えるために努力することが必要不可欠なのです。

 子どもたちの努力が報われない瞬間が、もしかしたら訪れるかもしれません。大人だとそこから一人で立ち上がることができるかもしれませんが、子どもたちはまだまだこれからです。だからこそ、保護者のみなさまがいて、私たち花まる学習会があります。「報われなかった努力」で終わるのではなく、最後には「あのときの努力は無駄ではなかった」と子どもたちが思えるよう、サポートし続けてまいります。まだまだ保護者のみなさまにもお助けいただく点があるかと思いますが、今年度も残り1か月、最後までどうぞよろしくお願いいたします。

花まる学習会 髙橋駿輔(2022年)


*・*・*花まる教室長コラム*・*・*

それぞれの教室長が、子どもたちとの日々のかかわりのなかでの気づきや思いをまとめたものです。毎月末に発行している花まるだよりとともに、会員の皆様にお渡ししています。

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